碧巌録 / 第六十九則
垂示云。無啗啄處。祖師心印。狀似鐵牛之機。透荊棘林。衲僧家。如紅爐上一點雪。平地上七穿八穴則且止。不落寅緣。又作麼生。試舉看。
新字:垂示云。無啗啄処。祖師心印。状似鉄牛之機。透荊棘林。衲僧家。如紅炉上一点雪。平地上七穿八穴則且止。不落寅縁。又作麼生。試舉看。
書き下し
垂示に云く、啗啄する処無き、祖師の心印は、状ち鉄牛の機に似たり。荊棘林を透る衲僧家は、紅炉上の一点の雪の如し。平地上に七穿八穴することは則ち且く止む。寅縁に落ちざるは、又作麼生。試みに挙し看ん。
現代語訳
垂示にいう。歯を立てるところのない祖師の心印は、その姿は鉄の牛の働きに似ている。いばらの林を通り抜けた僧は、真っ赤な炉の上に落ちた一片の雪のようである。平地で縦横無尽に通じることはしばらく置く。因縁に落ちないところは、またどうか。試みに取り上げて見よう。
解説
圜悟の垂示である。祖師の心印は鉄の牛のように歯の立てようがなく、いばらの林を抜けた禅僧は、紅炉の上に落ちた一点の雪のように跡形もなく消える。どれほど鋭く縦横に働いても、それはまだ平地の上のことだと圜悟は言い、因縁に落ちない所はどうかと問う。この垂示は、南泉・帰宗・麻谷の三人が旅の途中で一場の応酬を演じる次の本則への導入である。技量を誇る段階を過ぎると、働きはかえって目立たなくなる。紅炉の雪のように、跡を残さない仕事こそ熟達の証なのである。
この章句が説くこと
垂示心印無心熟達紅炉
関連する章句
-
『碧巌録』第一則垂示に云く、山を隔てて煙を見て、早く是れ火なることを知り、牆を隔てて角を見て、便ち是れ牛なることを知る。一を挙げて三を明らめ、目機銖両す、是れ衲僧家の尋常の茶飯なり。衆流を截断するに至つては、東に湧き西に没し、逆順縦横、与奪自在なり。正当恁麼の時、且く道へ、是れ什麼人の行履の処ぞ。雪竇の葛藤を看取せよ。
-
『碧巌録』第十三則垂示に云く、雲大野に凝りて、遍界蔵さず。雪蘆花を覆うて、朕迹を分かち難し。冷き処は冷きこと氷雪の如く、細かなる処は細かなること米末の如し。深深たる処は仏眼も窺ひ難く、密密たる処は魔外も測る莫し。一を挙げて三を明らむることは即ち且く止む。天下の人の舌頭を坐断す、作麼生か道はん。且く道へ、是れ什麼人の分上の事ぞ。試みに挙す看よ。
-
『碧巌録』第六十三則垂示に云く、意路到らざるところ、正に好し提撕するに。言詮及ばざるところ、宜しく急ぎ眼を著くべし。若也し電転じ星飛ばば、便ち湫を傾け嶽を倒すべし。衆中、辨得する底有ること莫しや。試みに挙し看ん。
-
『碧巌録』第九十四則垂示に云く、声前の一句、千聖も伝へず。面前の一糸、長時に間無し。浄裸裸赤灑灑、露地の白牛。眼卓朔耳卓朔、金毛の獅子は則ち且く置く。且く道へ、作麼生か是れ露地の白牛。
-
『碧巌録』第三十八則是の時五代離乱す。郢州の牧主、師を請じて夏を度らしむ。是の時臨済の一宗大いに盛んなり。他凡そ是れ問答垂示、語句の尖新なることを妨げず。花を攢め錦を簇めて、字字皆下落有り。一日牧主、師を請じて上堂せしむ。衆に示して云く、祖師の心印、状鉄牛の機に似たり。去れば即ち印住し、住すれば即ち印破す。只如ば去らず住せずんば、印するが即ち是か、印せざるが即ち是か。何が故ぞ。石人木馬の機に似ず、直下に鉄牛の機に似たり。爾が撼動する処無し。爾才かに去れば即ち印住し、爾才かに住すれば即ち印破す。爾をして百雑砕ならしむ。只如ば去らず住せずんば、印するが即ち是か、印せざるが即ち是か。看よ他の恁麼の垂示、鉤頭に餌有りと謂ひつべし。是の時座下に盧陂長老有り、亦た是れ臨済下の尊宿なり。敢へて頭を出だし来りて他と機に対し、便ち他の話頭を転じて、箇の問端を致す。奇特なることを妨げず。道ふ、某甲鉄牛の機有り、請ふ師印を搭けざれと。
-
『碧巌録』第六十五則垂示に云く、無相にして形はれ、十虚に充ちて方広なり。無心にして応じ、刹海に遍くして煩はしからず。一を挙げて三を明らめ、目機銖両す。直に棒は雨点の如く、喝は雷の奔るに似たるを得るも、也た未だ向上人の行履に当たり得ず。且く道へ作麼生か是れ向上人の事。試みに挙す。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る