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碧巌録 / 第六十二則

雲門道。乾坤之內。宇宙之間。中有一寶。祕在形山。且道雲門意在釣竿頭。意在燈籠上。此乃肇法師寶藏論數句。雲門拈來示眾。肇公時於後秦逍遙園造論。寫維摩經。方知莊老未盡其妙。肇乃禮羅什為師。又參瓦棺寺跋陀婆羅菩薩。從西天二十七祖處。傳心印來。肇深造其堂奧。肇一日遭難。臨刑之時。乞七日假。造寶藏論。雲門便拈論中四句。示眾。大意云。如何以無價之寶。隱在陰界之中。論中語言。皆與宗門說話相符合。

新字:雲門道。乾坤之内。宇宙之間。中有一宝。秘在形山。且道雲門意在釣竿頭。意在灯籠上。此乃肇法師宝蔵論数句。雲門拈来示衆。肇公時於後秦逍遥園造論。写維摩経。方知荘老未尽其妙。肇乃礼羅什為師。又参瓦棺寺跋陀婆羅菩薩。従西天二十七祖処。伝心印来。肇深造其堂奥。肇一日遭難。臨刑之時。乞七日仮。造宝蔵論。雲門便拈論中四句。示衆。大意云。如何以無価之宝。隠在陰界之中。論中語言。皆与宗門説話相符合。

書き下し

雲門道ふ、「乾坤の内、宇宙の間、中に一宝有り、形山に秘在す」と。且く道へ、雲門の意は釣竿頭に在りや、意は灯籠上に在りや。此れは乃ち肇法師の宝蔵論の数句なり。雲門拈じ来たりて衆に示す。肇公、時に後秦の逍遥園に於いて論を造る。維摩経を写して、方に荘老の未だ其の妙を尽くさざることを知る。肇乃ち羅什を礼して師と為し、又瓦棺寺の跋陀婆羅菩薩に参ず。西天二十七祖の処より心印を伝へ来たる。肇深く其の堂奥に造る。肇一日難に遭ひ、刑に臨むの時、七日の假を乞ひて宝蔵論を造る。雲門便ち論中の四句を拈じて衆に示す。大意に云く、「如何んぞ無価の宝を以て陰界の中に隠在せしむる」と。論中の語言、皆宗門の説話と相符合す。

現代語訳

雲門は「天地の内、宇宙の間、その中に一つの宝があり、形ある山に秘められている」と言った。さて言ってみよ、雲門の意は釣竿の先にあるのか、灯籠の上にあるのか。これは僧肇法師の『宝蔵論』の数句である。雲門はそれを取り上げて衆に示した。僧肇はかつて後秦の逍遥園で論を著した。『維摩経』を書写して、はじめて老荘がまだその妙を尽くしていないことを知った。そこで僧肇は鳩摩羅什を礼して師とし、また瓦棺寺の跋陀婆羅菩薩に参じた。この菩薩は西天の二十七祖のもとから心印を伝えてきた人である。僧肇は深くその奥義に達した。僧肇はある日災難に遭い、処刑に臨んだとき、七日の猶予を乞うて『宝蔵論』を著した。雲門はその論中の四句を取り上げて衆に示したのである。その大意は「なぜ値の付けられない宝を、五陰や十八界の中に隠しておくのか」ということである。論中の言葉は、どれも禅宗の説くところと符合している。

解説

圜悟の評唱の冒頭で、本則前半の四句の出典を説く。四句は僧肇の『宝蔵論』からとられたもので、圜悟は僧肇が『維摩経』によって老荘を超え、鳩摩羅什に師事し、刑に臨んで七日の猶予を乞い論を著したという伝承を紹介する。伝承の真偽はともかく、命の際に書かれた言葉として重みを与えている。そのうえで、雲門の意は宝の句にあるのか灯籠の句にあるのかと問いを投げる。出典を知ることは理解の助けになるが、圜悟はそれで終わらせない。知識を得たうえでなお、その言葉で何を指し示すかを自分で問う姿勢が求められるのである。

この章句が説くこと

宝蔵論僧肇言葉出典仏性

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