碧巌録 / 第五十五則
垂示云。穩密全真。當頭取證。涉流轉物。直下承當。向擊石火閃電光中。坐斷誵訛。於據虎頭收虎尾處。壁立千仞。則且置。放一線道。還有為人處也無。試舉看。
新字:垂示云。穏密全真。当頭取証。渉流転物。直下承当。向撃石火閃電光中。坐断誵訛。於拠虎頭収虎尾処。壁立千仞。則且置。放一線道。還有為人処也無。試舉看。
書き下し
垂示に云く、穏密全真、当頭に証を取り、渉流転物、直下に承当す。撃石火閃電光の中に向かつて誵訛を坐断し、虎頭に拠り虎尾を収むる処に於て、壁立千仞なることは則ち且く置く。一線道を放つて、還た人の為にする処有りや也た無しや。試みに挙し看ん。
現代語訳
垂示にいう。ひそやかに真実をまるごと具え、まともに向き合ってそのまま悟りを得る。流れを渡り物を転じながら、ただちに引き受ける。火打ち石の火花や稲妻の光の中でもつれを断ち切り、虎の頭を押さえ虎の尾を収めるところで、万仞の絶壁のように立つことは、ひとまず置こう。一筋の道を開いて、人のためにはかるところがあるのかないのか。試みに取り上げてみよう。
解説
圜悟が第五十五則の前に置いた垂示である。前半は、真実をそのまま証し、流れの中で物を転じてただちに引き受ける、禅者の峻厳な境地を並べる。前則の言葉でもある虎頭を押さえ虎尾を収めるという絶壁のような厳しさは、ここではひとまず脇に置かれる。そのうえで、一筋の道を開いて人のために手を差し伸べる処があるかと問う。厳しく突き放すだけでなく、相手が通れる道を残すことも師の働きだという含みがある。人を育てる立場にある者にとって、厳しさと手引きの釣り合いを考えさせる一文である。
この章句が説くこと
垂示慈悲厳しさ育成一線道承当
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