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武士訓 / 卷三・第21段

人をつかふに。あまりにけやけくきびしければ。うはべはしたがふやうなれども。そむきうらむのこゝろあり。老子の小鮮をにるがごとしといへる語は。よろづに通ずるなり。但し慈愛のみにて。恐怖することなければ。輕じて命を背とあり。いつくしみおそれしめたるばかりにて。其身の行跡直ならざれば。をしへをほどこすことあたはず。これによりて前にもいふごとく。克剛に克柔に克正直ならずしては。身をおさめ。家をととのふることは。かなひがたきなり。

新字:人をつかふに。あまりにけやけくきびしければ。うはべはしたがふやうなれども。そむきうらむのこゝろあり。老子の小鮮をにるがごとしといへる語は。よろづに通ずるなり。但し慈愛のみにて。恐怖することなければ。軽じて命を背とあり。いつくしみおそれしめたるばかりにて。其身の行跡直ならざれば。をしへをほどこすことあたはず。これによりて前にもいふごとく。克剛に克柔に克正直ならずしては。身をおさめ。家をととのふることは。かなひがたきなり。

書き下し

人をつかふに。あまりにけやけくきびしければ。うはべはしたがふやうなれども。そむきうらむのこゝろあり。老子の小鮮をにるがごとしといへる語は。よろづに通ずるなり。但し慈愛のみにて。恐怖することなければ。輕じて命を背とあり。いつくしみおそれしめたるばかりにて。其身の行跡直ならざれば。をしへをほどこすことあたはず。これによりて前にもいふごとく。克剛に克柔に克正直ならずしては。身をおさめ。家をととのふることは。かなひがたきなり。

現代語訳

人を使うのに、あまりに際立って厳しければ、うわべは従うようでも、背き恨む心が生まれます。老子の「小鮮を煮るがごとし」という語は、あらゆることに通じます。ただし、慈愛だけで恐れる気持ちがなければ、軽んじて命令に背きます。慈しみ、恐れさせるだけで、自分の行いが正しくなければ、教えを施すことはできません。そのため、前にも言ったように、克剛・克柔・克正直でなくては、身を修め、家を整えることはかないがたいのです。

解説

この段は、人の使い方は厳しすぎてもだめで、甘すぎてもだめだと述べます。厳しすぎればうわべだけ従って背き恨む心が生まれ、慈愛だけで恐れがなければ軽んじて命に背きます。老子の語は、あらゆることに通じる心得として引かれています。さらに、慈しみと恐れを備えても、自分の行いが正しくなければ教えは施せないと、最後は本人の姿勢に戻します。前にも言ったとおり、克剛・克柔・克正直を兼ねよという筋です。現代の管理職も、厳しさと寛容のどちらかに偏りやすいものです。基準は崩さず、人には温かく、自分の行いを正しく保つ三つを同時に問われています。

この章句が説くこと

厳しさ慈愛老子克剛克柔人の使い方武士訓

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