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碧巌録 / 第五十三則

馬祖次日陞堂眾纔集。百丈出卷却拜蓆。馬祖便下座。歸方丈次問百丈。我適來上堂。未曾說法。爾為什麼。便卷却蓆丈云。昨日被和尚扭得鼻孔痛。祖云。爾昨日向甚處留心。丈云。今日鼻頭又不痛也。祖云。爾深知今日事。丈乃作禮。却歸侍者寮哭。同事侍者問云。爾哭作什麼。丈云。爾去問取和尚。侍者遂去問馬祖。祖云。爾去問取他看。侍者却歸寮問百丈。丈却呵呵大笑。侍者云。爾適來哭。而今為什麼却笑。丈云。我適來哭。如今却笑。看他悟後。阿轆轆地。羅籠不住。自然玲瓏。雪竇頌云。

新字:馬祖次日陞堂衆纔集。百丈出巻却拝蓆。馬祖便下座。帰方丈次問百丈。我適来上堂。未曽説法。爾為什麼。便巻却蓆丈云。昨日被和尚扭得鼻孔痛。祖云。爾昨日向甚処留心。丈云。今日鼻頭又不痛也。祖云。爾深知今日事。丈乃作礼。却帰侍者寮哭。同事侍者問云。爾哭作什麼。丈云。爾去問取和尚。侍者遂去問馬祖。祖云。爾去問取他看。侍者却帰寮問百丈。丈却呵呵大笑。侍者云。爾適来哭。而今為什麼却笑。丈云。我適来哭。如今却笑。看他悟後。阿轆轆地。羅籠不住。自然玲瓏。雪竇頌云。

書き下し

馬祖、次の日陞堂す。衆纔かに集まるや、百丈出でて拝蓆を巻却す。馬祖便ち下座す。方丈に帰る次、百丈に問ふ、「我適来上堂して、未だ曽て説法せず。爾什麼としてか便ち蓆を巻却する」。丈云く、「昨日和尚に鼻孔を扭られて痛し」。祖云く、「爾昨日甚れの処に向かつてか心を留む」。丈云く、「今日鼻頭又た痛まず」。祖云く、「爾深く今日の事を知れり」。丈乃ち礼を作し、却つて侍者寮に帰つて哭す。同事の侍者問うて云く、「爾哭して什麼をか作す」。丈云く、「爾去つて和尚に問取せよ」。侍者遂に去つて馬祖に問ふ。祖云く、「爾去つて他に問取し看よ」。侍者却つて寮に帰つて百丈に問ふ。丈却つて呵呵大笑す。侍者云く、「爾適来哭し、而今什麼としてか却つて笑ふ」。丈云く、「我適来哭し、如今却つて笑ふ」。看よ他の悟後、阿轆轆地にして、羅籠すれども住まらず、自然に玲瓏たり。雪竇頌して云く。

現代語訳

馬祖は翌日、法堂に上がった。大衆が集まるやいなや、百丈が進み出て礼拝の敷物を巻き上げてしまった。馬祖はすぐに座を下りた。方丈に帰る途中、馬祖は百丈に問うた、「わしはさっき上堂して、まだ説法もしていない。お前はなぜ敷物を巻き上げたのか」。百丈「昨日和尚に鼻をひねられて痛かったからです」。馬祖「お前は昨日どこに心を留めていたのか」。百丈「今日は鼻はもう痛みません」。馬祖「お前は今日の事を深く知った」。百丈は礼拝して、侍者の部屋に帰って声を上げて泣いた。同僚の侍者が「なぜ泣いているのか」と問うと、百丈は「和尚に聞きに行け」と言った。侍者が馬祖に聞きに行くと、馬祖は「彼に聞いてみよ」と言った。侍者が部屋に戻って百丈に問うと、百丈はからからと大笑いした。侍者「さっきは泣いていたのに、今はなぜ笑うのか」。百丈「さっきは泣き、今は笑う」。見よ、悟った後の百丈は、ころころと自在で、網や籠でも捕らえておけず、おのずから透き通るように明らかである。雪竇は頌していう。

解説

評唱の結びで圜悟は、野鴨の翌日の後日談を語る。上堂した馬祖の前で百丈が拝蓆を巻き上げ、馬祖は黙って座を下りた。問われた百丈は、昨日は鼻が痛かったが今日はもう痛まないと答え、馬祖は今日の事を深く知ったと認める。その後、百丈は部屋で泣き、すぐに大笑いして「適来は哭し、如今は笑ふ」と言い放つ。昨日にも今日にもとらわれず、泣くも笑うも自在な姿を、圜悟は羅籠すれども住まらずと讃える。一度の気づきを経た人は、感情を押し殺すのではなく、その時々をまっすぐに生きるようになるのだと読める。

この章句が説くこと

百丈馬祖悟り自由感情上堂

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