碧巌録 / 第四十九則
垂示云。七穿八穴。攙鼓奪旗。百匝千重。瞻前顧後。踞虎頭收虎尾。未是作家。牛頭沒馬頭回。亦未為奇特。且道過量底人來時如何。試舉看。
新字:垂示云。七穿八穴。攙鼓奪旗。百匝千重。瞻前顧後。踞虎頭収虎尾。未是作家。牛頭没馬頭回。亦未為奇特。且道過量底人来時如何。試舉看。
書き下し
垂示に云く、七穿八穴、鼓を攙り旗を奪ふ。百匝千重、前を瞻後を顧みる。虎頭に踞り虎尾を収むるも、未だ是れ作家ならず。牛頭没し馬頭回るも、亦た未だ奇特と為さず。且く道へ、過量底の人来たる時如何。試みに挙し看よ。
現代語訳
垂示に言う。縦横に突き破り、敵の太鼓を奪い旗を奪う。百重千重に取り囲み、前を見張り後ろを顧みる。虎の頭にまたがり虎の尾を押さえても、まだ練達の者とはいえない。牛頭が消えて馬頭が現れる(変幻自在である)のも、まだ優れたこととはいえない。さあ言ってみよ、度量を超えた人がやって来た時はどうか。試みに取り上げてみよう。
解説
第四十九則の冒頭に置かれた圜悟の垂示である。敵陣を縦横に突き破って太鼓や旗を奪う勇猛さも、幾重にも囲んで前後に目を配る周到さも挙げたうえで、虎の頭と尾をともに制してもまだ作家ではないと言い切る。牛頭が消えて馬頭が現れるような変幻自在の働きも、なお奇特とはしない。そのうえで、あらゆる尺度を超えた過量の人が来たらどうするかと問う。続く三聖と雪峰の問答は、まさにそうした二人の出会いである。有能さの物差しを一段越えた人物像を考えさせる問いである。
この章句が説くこと
垂示作家力量自由過量兵法
関連する章句
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『碧巌録』第四十三則垂示に云く、乾坤を定むる句は、万世共に遵ひ、虎兕を擒ふる機は、千聖も弁ずる莫し。直下に更に繊翳無く、全機随処に斉しく彰はる。向上の鉗鎚を明らめんと要せば、須らく是れ作家の炉韛なるべし。且く道へ、従上来還つて恁麼の家風有りや無しや。試みに挙し看よ。
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『碧巌録』第六十六則垂示に云く、機に当たり面を覿て、陥虎の機を提げ、正按傍提して、擒賊の略を布く。明合暗合、双放双収、解く死蛇を弄するは、他の作者に還す。
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『碧巌録』第四十一則垂示に云く、是非交結する処、聖も亦た知ること能はず。逆順縦横の時、仏も亦た弁ずること能はず。絶世超倫の士と為り、逸群大士の能を顕さば、氷凌上に向かつて行き、剣刃上に走る。直下に麒麟の頭角の如く、火裏の蓮花に似たり。宛に超方を見て、始めて同道を知る。誰か是れ好手の者ぞ。試みに挙し看よ。
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『碧巌録』第五十五則垂示に云く、穏密全真、当頭に証を取り、渉流転物、直下に承当す。撃石火閃電光の中に向かつて誵訛を坐断し、虎頭に拠り虎尾を収むる処に於て、壁立千仞なることは則ち且く置く。一線道を放つて、還た人の為にする処有りや也た無しや。試みに挙し看ん。
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『碧巌録』第三十九則垂示に云く、途中受用底は、虎の山に靠るに似たり。世諦流布底は、猿の檻に在るが如し。仏性の義を知らんと欲せば、当に時節因縁を観ずべし。百錬の精金を煅へんと欲せば、須らく是れ作家の炉韛なるべし。且く道へ、大用現前底は、什麼を将てか試験せん。
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