碧巌録 / 第十三則
西天欲論議。須得奉王勅。於大寺中。聲鐘擊鼓。然後論議。於是外道於僧寺中。封禁鐘鼓。為之沙汰。時迦那提婆尊者。知佛法有難。遂運神通。登樓撞鐘。欲擯外道。外道遂問。樓上聲鍾者誰。提婆云。天。外道云。天是誰。婆云。我。外道云。我是誰。婆云。我是爾。外道云。爾是誰。婆云。爾是狗。外道云。狗是誰。婆云。狗是爾。如是七返。外道自知負墮。伏義遂自開門。提婆於是從樓上持赤旛下來。外道云。汝何不後。婆云。汝何不前。外道云。汝是賤人。婆云。汝是良人。如是展轉酬問。提婆折以無礙之辯。由是歸伏。時提婆尊者。手持赤旛。義墮者旛下立。外道皆斬首謝過。時提婆止之。但化令削髮入道。於是提婆宗大興。雪竇後用此事而頌之。
新字:西天欲論議。須得奉王勅。於大寺中。声鐘撃鼓。然後論議。於是外道於僧寺中。封禁鐘鼓。為之沙汰。時迦那提婆尊者。知仏法有難。遂運神通。登楼撞鐘。欲擯外道。外道遂問。楼上声鍾者誰。提婆云。天。外道云。天是誰。婆云。我。外道云。我是誰。婆云。我是爾。外道云。爾是誰。婆云。爾是狗。外道云。狗是誰。婆云。狗是爾。如是七返。外道自知負堕。伏義遂自開門。提婆於是従楼上持赤旛下来。外道云。汝何不後。婆云。汝何不前。外道云。汝是賤人。婆云。汝是良人。如是展転酬問。提婆折以無礙之弁。由是帰伏。時提婆尊者。手持赤旛。義堕者旛下立。外道皆斬首謝過。時提婆止之。但化令削髪入道。於是提婆宗大興。雪竇後用此事而頌之。
書き下し
西天論議せんと欲せば、須らく王勅を奉ずることを得て、大寺の中に於て、鐘を声らし鼓を撃ち、然る後に論議すべし。是に於て外道、僧寺の中に於て鐘鼓を封禁し、之が為に沙汰す。時に迦那提婆尊者、仏法に難有ることを知り、遂に神通を運らし、楼に登りて鐘を撞き、外道を擯せんと欲す。外道遂に問ふ、楼上に鍾を声らす者は誰ぞ。提婆云く、天。外道云く、天は是れ誰ぞ。婆云く、我。外道云く、我は是れ誰ぞ。婆云く、我は是れ爾。外道云く、爾は是れ誰ぞ。婆云く、爾は是れ狗。外道云く、狗は是れ誰ぞ。婆云く、狗は是れ爾。是の如く七返す。外道自ら負墮を知り、義に伏して遂に自ら門を開く。提婆是に於て楼上より赤旛を持して下り来たる。外道云く、汝何ぞ後れざる。婆云く、汝何ぞ前まざる。外道云く、汝は是れ賤人。婆云く、汝は是れ良人。是の如く展転して酬問す。提婆折くに無礙の弁を以てし、是に由りて帰伏す。時に提婆尊者、手に赤旛を持し、義に墮する者は旛下に立つ。外道皆首を斬りて過を謝せんとす。時に提婆之を止め、但だ化して髪を削りて道に入らしむ。是に於て提婆宗大いに興る。雪竇後に此の事を用ゐて之を頌す。
現代語訳
インドで論議をするには、王の勅許を受け、大寺の中で鐘を鳴らし太鼓を打ち、そのうえで論議しなければならなかった。そこで外道たちは僧寺の鐘と太鼓を封じて禁じ、仏教を排斥した。そのとき迦那提婆尊者は仏法に危難があることを知り、神通を働かせて楼に登り鐘を撞き、外道を退けようとした。外道は問うた。「楼の上で鐘を鳴らしているのは誰か」。提婆「天だ」。外道「天とは誰か」。提婆「我だ」。外道「我とは誰か」。提婆「我とはお前だ」。外道「お前とは誰か」。提婆「お前とは犬だ」。外道「犬とは誰か」。提婆「犬とはお前だ」。このように七度やりとりして、外道は自ら負けたことを知り、道理に屈服してついに自分で門を開けた。提婆はそこで楼の上から赤い旗を持って下りて来た。外道「お前はなぜ後に下がらないのか」。提婆「お前はなぜ前に進まないのか」。外道「お前は卑しい者だ」。提婆「お前は良い人だ」。このように次々と問答を重ね、提婆は何ものにも妨げられない弁舌で論破し、これによって外道たちは帰服した。そのとき提婆尊者は手に赤い旗を持ち、論に負けた者たちは旗の下に立った。外道たちはみな首を斬って過ちを詫びようとしたが、提婆はそれを止め、ただ教化して髪を剃らせ仏道に入らせた。こうして提婆宗は大いに興った。雪竇はのちにこの事を用いて頌に詠んだのである。
解説
この章句が説くこと
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