碧巌録 / 第十一則
雪竇道。端居寰海定龍蛇。是龍是蛇。入門來便驗取。謂之定龍蛇眼擒虎兕機。雪竇又道。定龍蛇兮眼何正。擒虎兕兮機不全。又道。大中天子曾輕觸。三度親遭弄爪牙。黃檗豈是如今惡脚手。從來如此。大中天子者。續咸通傳中載。唐憲宗有二子。一曰穆宗。一曰宣宗。宣宗乃大中也。年十三。少而敏黠。常愛跏趺坐。穆宗在位時。因早朝罷。大中乃戲登龍床。作揖群臣勢。大臣見而謂之心風。乃奏穆宗。穆宗見而撫歎曰。我弟乃吾宗英胄也。穆宗於長慶四年。晏駕。有三子。曰敬宗文宗武宗。敬宗繼父位。二年內臣謀易之。文宗繼位。一十四年。武宗即位。常喚大中作癡奴。一日武宗。恨大中昔日戲登父位。遂打殺致後苑中。以不潔灌。而復甦。
新字:雪竇道。端居寰海定竜蛇。是竜是蛇。入門来便験取。謂之定竜蛇眼擒虎兕機。雪竇又道。定竜蛇兮眼何正。擒虎兕兮機不全。又道。大中天子曽軽触。三度親遭弄爪牙。黄檗豈是如今悪脚手。従来如此。大中天子者。続咸通伝中載。唐憲宗有二子。一曰穆宗。一曰宣宗。宣宗乃大中也。年十三。少而敏黠。常愛跏趺坐。穆宗在位時。因早朝罷。大中乃戯登竜床。作揖群臣勢。大臣見而謂之心風。乃奏穆宗。穆宗見而撫嘆曰。我弟乃吾宗英胄也。穆宗於長慶四年。晏駕。有三子。曰敬宗文宗武宗。敬宗継父位。二年内臣謀易之。文宗継位。一十四年。武宗即位。常喚大中作痴奴。一日武宗。恨大中昔日戯登父位。遂打殺致後苑中。以不潔灌。而復甦。
書き下し
雪竇道ふ、端居して寰海に龍蛇を定むと。是れ龍か是れ蛇か、門に入り来たれば便ち験取す。之を龍蛇を定むる眼、虎兕を擒ふる機と謂ふ。雪竇又道ふ、龍蛇を定めて眼何ぞ正しき、虎兕を擒へて機全からず。又道ふ、大中天子曾て軽く触れ、三度親しく爪牙を弄するに遭ふと。黄檗豈に是れ如今の悪脚手ならんや、従来此の如し。大中天子とは、続咸通伝の中に載す。唐の憲宗に二子有り、一を穆宗と曰ひ、一を宣宗と曰ふ。宣宗は乃ち大中なり。年十三、少くして敏黠、常に跏趺坐を愛す。穆宗位に在りし時、早朝罷むるに因りて、大中乃ち戯れに龍床に登り、群臣に揖する勢を作す。大臣見て之を心風と謂ひ、乃ち穆宗に奏す。穆宗見て撫歎して曰く、我が弟は乃ち吾が宗の英胄なりと。穆宗、長慶四年に於て晏駕す。三子有り、敬宗・文宗・武宗と曰ふ。敬宗父の位を継ぐ。二年にして内臣謀つて之を易ふ。文宗位を継ぐこと一十四年。武宗位に即く。常に大中を喚んで癡奴と作す。一日武宗、大中の昔日戯れに父の位に登りしを恨み、遂に打殺して後苑の中に致し、不潔を以て灌ぐ。而して復た甦る。
現代語訳
雪竇は「どっしりと座ったまま、天下に龍と蛇とを見定める」と言った。龍か蛇か、門を入って来たとたんに見極める。これを、龍と蛇を見定める眼、虎や野牛を捕らえる働きという。雪竇はまた別のところで「龍と蛇を見定めるその眼はなんと正しいことか、虎や野牛を捕らえるその働きはまだ全くはない」とも言っている。またここで「大中天子はかつて軽はずみに触れて、三度、身をもって爪と牙の餌食となった」と言う。黄檗の手荒さは今に始まったことではなく、もとからこうなのである。大中天子のことは『続咸通伝』に載っている。唐の憲宗には二人の子があり、一人は穆宗、一人は宣宗といった。宣宗が大中である。十三歳のころ、幼くして賢く、いつも結跏趺坐を好んだ。穆宗の在位中、朝廷の朝の政務が終わったあと、大中がふざけて玉座に上り、群臣に会釈する様子をまねた。大臣たちはそれを見て気がふれたと思い、穆宗に奏上した。穆宗はそれを見て、撫でながら感嘆し「わが弟はわが一族の英才である」と言った。穆宗は長慶四年に崩御した。三人の子があり、敬宗・文宗・武宗といった。敬宗が父の位を継いだが、二年で宮中の臣下が謀って替えた。文宗が位を継いで十四年。武宗が即位すると、いつも大中を「愚か者」と呼んでいた。ある日、武宗は大中が昔ふざけて父の玉座に上ったことを恨み、打ち殺して後苑に運び、汚物を浴びせた。ところが大中は息を吹き返した。
解説
この章句が説くこと
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