碧巌録 / 第十一則
檗與裴相國為方外友。裴鎮宛陵請師至郡。以所解一編。示師。師接置於座。略不披閱。良久乃云。會麼。裴云。不會。檗云。若便恁麼會得。猶較些子。若也形於紙墨。何處更有吾宗。裴乃以頌贊云。自從大士傳心印。額有圓珠七尺身。掛錫十年棲蜀水。浮盃今日渡漳濱。八千龍象隨高步。萬里香花結勝因。擬欲事師為弟子。不知將法付何人。師亦無喜色云。心如大海無邊際。口吐紅蓮養病身。自有一雙無事手。不曾祇揖等閑人。
新字:檗与裴相国為方外友。裴鎮宛陵請師至郡。以所解一編。示師。師接置於座。略不披閲。良久乃云。会麼。裴云。不会。檗云。若便恁麼会得。猶較些子。若也形於紙墨。何処更有吾宗。裴乃以頌賛云。自従大士伝心印。額有円珠七尺身。掛錫十年棲蜀水。浮盃今日渡漳浜。八千竜象随高歩。万里香花結勝因。擬欲事師為弟子。不知将法付何人。師亦無喜色云。心如大海無辺際。口吐紅蓮養病身。自有一双無事手。不曽祇揖等閑人。
書き下し
檗、裴相国と方外の友たり。裴、宛陵に鎮し、師を請じて郡に至らしむ。所解の一編を以て師に示す。師接して座に置き、略ぼ披閲せず。良久して乃ち云く、会すや。裴云く、会せず。檗云く、若し便ち恁麼に会し得ば、猶ほ些子に較れり。若也紙墨に形さば、何れの処にか更に吾が宗有らん。裴乃ち頌を以て賛して云く、大士心印を伝へしより、額に円珠有り七尺の身。錫を掛くること十年蜀水に棲み、盃を浮かべて今日漳浜を渡る。八千の龍象高歩に随ひ、万里の香花勝因を結ぶ。師に事へて弟子と為らんと擬欲するも、知らず法を将て何人にか付せん。師も亦た喜色無くして云く、心は大海の如く辺際無く、口に紅蓮を吐いて病身を養ふ。自ら一双の無事の手有り、曾て等閑の人に祇揖せず。
現代語訳
黄檗は宰相の裴休と、世俗を超えた友であった。裴休が宛陵の長官であったとき、師を郡に招き、自分の理解を書き記した一編を師に見せた。師は受け取って座に置き、ほとんど開いて読みもしなかった。しばらく黙ってから「わかるか」と言った。裴休は「わかりません」と答えた。黄檗は言った。「もしそのようにわかるのなら、まだ少しはましだ。もし紙と墨の上に表すのなら、どこにわが宗があろうか」。裴休はそこで頌を作って讃えた。「大士が心印を伝えて以来、額に円い珠をもつ七尺の身。錫杖を掛けて十年、蜀の水辺に住み、盃を浮かべて今日、漳水のほとりを渡る。八千の優れた修行者がその高い歩みに従い、万里の香と花が尊い因縁を結ぶ。師に仕えて弟子になりたいと願うが、法をいったい誰に託されるのだろうか」。師もまた喜ぶ様子もなく言った。「心は大海のように果てしなく、口から紅蓮を吐いて病の身を養う。おのずと一対の無事の手があり、これまでつまらぬ人に会釈したことはない」。
解説
この章句が説くこと
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