碧巌録 / 第十一則
黃檗身長七尺。額有圓珠。天性會禪。師昔遊天台。路逢一僧。與之談笑。如故相識。熟視之目光射人。頗有異相。乃偕行。屬溪水暴漲。乃植杖捐笠而止。其僧率師同渡。師曰。請渡。彼即褰衣。躡波如履平地。回顧云渡來渡來。師咄云。這自了漢。吾早知揑怪。當斫汝脛。其僧歎曰。真大乘法器。言訖不見。
新字:黄檗身長七尺。額有円珠。天性会禅。師昔遊天台。路逢一僧。与之談笑。如故相識。熟視之目光射人。頗有異相。乃偕行。属渓水暴漲。乃植杖捐笠而止。其僧率師同渡。師曰。請渡。彼即褰衣。躡波如履平地。回顧云渡来渡来。師咄云。這自了漢。吾早知揑怪。当斫汝脛。其僧嘆曰。真大乗法器。言訖不見。
書き下し
黄檗、身の長七尺、額に円珠有り、天性禅を会す。師、昔天台に遊ぶ。路に一僧に逢ひ、之と談笑す。故より相識るが如し。熟々之を視れば、目光人を射て、頗る異相有り。乃ち偕に行く。渓水の暴に漲るに属ひ、乃ち杖を植て笠を捐てて止まる。其の僧、師を率ゐて同じく渡らんとす。師曰く、請ふ渡れ。彼即ち衣を褰げ、波を躡むこと平地を履むが如し。回顧して云く、渡り来たれ、渡り来たれ。師咄して云く、這の自了漢、吾早く揑怪を知らば、当に汝が脛を斫るべし。其の僧歎じて曰く、真の大乗の法器なり。言ひ訖りて見えず。
現代語訳
黄檗は身の丈七尺、額に丸い肉の盛り上がりがあり、生まれつき禅を会得していた。師は昔、天台山に遊んだ。道で一人の僧に出会い、ともに談笑したが、まるで昔からの知り合いのようであった。よく見ると、その目の光は人を射るようで、ただならぬ相をしていた。そこで連れ立って行った。ちょうど谷川の水がにわかにあふれていたので、師は杖を立て笠を置いて立ち止まった。その僧は師を連れて一緒に渡ろうとした。師が「どうぞお渡りなさい」と言うと、僧は衣の裾をからげ、波の上を平地を歩くように歩いて行き、振り返って「渡っておいで、渡っておいで」と言った。師は叱りつけて言った。「この自分だけ悟った奴め。お前がこんな怪しげなことをすると早くわかっていたら、脛を叩き切ってやったものを」。その僧は感嘆して「まことの大乗の器だ」と言い、言い終わると姿が見えなくなった。
解説
この章句が説くこと
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