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碧巌録 / 第八則

古人有晨參暮請。翠嵒至夏末。却恁麼示眾。然而不妨孤峻。不妨驚天動地。且道。一大藏教。五千四十八卷。不免說心說性。說頓說漸。還有這箇消息麼。一等是恁麼時節。翠嵒就中奇特。看他恁麼道。且道他意落在什麼處。古人垂一鉤。終不虛設。須是有箇道理為人。人多錯會道。白日青天說無向當話。無事生事。夏末先自說過。先自點檢。免得別人點檢他。且喜沒交涉。這般見解。謂之滅胡種族。歷代宗師出世。若不垂示於人。都無利益。圖箇什麼。到這裏見得透。方知古人有驅耕夫之牛。奪飢人之食手段。

新字:古人有晨参暮請。翠嵒至夏末。却恁麼示衆。然而不妨孤峻。不妨驚天動地。且道。一大蔵教。五千四十八巻。不免説心説性。説頓説漸。還有這箇消息麼。一等是恁麼時節。翠嵒就中奇特。看他恁麼道。且道他意落在什麼処。古人垂一鉤。終不虚設。須是有箇道理為人。人多錯会道。白日青天説無向当話。無事生事。夏末先自説過。先自点検。免得別人点検他。且喜没交渉。這般見解。謂之滅胡種族。歴代宗師出世。若不垂示於人。都無利益。図箇什麼。到這裏見得透。方知古人有駆耕夫之牛。奪飢人之食手段。

書き下し

古人晨参暮請有り。翠巌夏末に至つて、却つて恁麼に衆に示す。然而も妨げず孤峻なることを、妨げず驚天動地なることを。且く道へ、一大蔵教、五千四十八巻、心を説き性を説き、頓を説き漸を説くことを免れず、還た這箇の消息有りや。一等に是れ恁麼の時節、翠巌就中奇特なり。看よ他の恁麼に道ふ。且く道へ、他の意什麼の処にか落在す。古人一鉤を垂る、終に虚しく設けず。須らく是れ箇の道理有つて人の為にすべし。人多く錯り会して道ふ、「白日青天に向当無き話を説き、無事に事を生ず。夏末に先づ自ら説き過ごし、先づ自ら点検して、別人の他を点検することを免れ得たり」と。且喜すらくは没交渉。這般の見解、之を胡の種族を滅すと謂ふ。歴代の宗師世に出づ、若し人に垂示せずんば、都て利益無し、箇の什麼をか図らん。這裏に到つて見得透せば、方に知らん、古人に耕夫の牛を駆り、飢人の食を奪ふ手段有ることを。

現代語訳

古人には朝に参じ夕べに教えを請うという習わしがあった。翠巌は夏の終わりになって、かえってこのように大衆に示した。それでいて、まことに孤高で険しく、天を驚かし地を動かすほどである。さあ言ってみよ、一大蔵経の五千四十八巻は、心を説き性を説き、頓悟を説き漸悟を説くことを免れないが、それでもこの消息があるか。同じくこのような時節にあって、翠巌はとりわけ見事である。彼がこのように言ったのを見よ。さあ言ってみよ、彼の意はどこに落ち着くのか。古人が一本の釣り針を垂れるのは、決して空しく設けるのではない。必ず道理があって人のためにするのである。人の多くは誤解して言う。「白昼の青空の下でとりとめのない話をし、何もないところに事を起こしている。夏の終わりにまず自ら言い過ぎたことを認め、まず自ら点検して、他人に点検されるのを免れたのだ」と。まったく見当違いである。このような見解を、胡(達磨)の種族を滅ぼすという。歴代の宗師が世に出て、もし人に示さなければ、何の利益もない。いったい何を図るというのか。ここに至って見て透ったなら、はじめて古人に、農夫の牛を追い立て、飢えた人の食を奪うほどの手並みがあることがわかるだろう。

解説

圜悟による本則評唱の前半である。朝夕に参じ教えを請うのが古人の常であるのに、翠巌は夏の終わりにあえてこう示したのであり、その孤峻さは天地を驚かすと圜悟は言う。一大蔵経が心や性、頓悟や漸悟を説いても、この消息があるかと問う。一方で、翠巌は語りすぎたことを先に自ら認めて、他人に点検されるのを免れたのだとする解釈を、達磨の種族を滅ぼす見解と退ける。古人が釣り針を垂れるのは必ず人のためであり、農夫の牛を追い飢えた人の食を奪うほどの手段だという。現代の働く者には、自己防衛の言い訳と、相手のために敢えて投げかける問いとを見分ける目を教える一段である。

この章句が説くこと

翠巌垂示指導厳しさ見解問い

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