碧巌録 / 第四則
眾中多道。溈山怕他有甚交涉。溈山亦不忙。所以道。智過於禽獲得禽。智過於獸獲得獸。智過於人獲得人。參得這般禪。盡大地森羅萬象。天堂地獄。草芥人畜。一時作一喝來。他亦不管掀倒禪床。喝散大眾。他亦不顧。如天之高。似地之厚。溈山若無坐斷天下人舌頭。底手脚。時驗他也大難。若不是他一千五百人善知識。到這裏也分疎不下。溈山是運籌帷幄。決勝千里。
新字:衆中多道。溈山怕他有甚交渉。溈山亦不忙。所以道。智過於禽獲得禽。智過於獣獲得獣。智過於人獲得人。参得這般禅。尽大地森羅万象。天堂地獄。草芥人畜。一時作一喝来。他亦不管掀倒禅床。喝散大衆。他亦不顧。如天之高。似地之厚。溈山若無坐断天下人舌頭。底手脚。時験他也大難。若不是他一千五百人善知識。到這裏也分疎不下。溈山是運籌帷幄。決勝千里。
書き下し
衆中多く道ふ、「溈山他を怕る」と。甚の交渉か有らん。溈山も亦た忙はず。所以に道ふ、「智禽に過ぐれば禽を獲得し、智獣に過ぐれば獣を獲得し、智人に過ぐれば人を獲得す」。這般の禅を参得せば、尽大地森羅万象、天堂地獄、草芥人畜、一時に一喝を作し来るも、他も亦た管せず。禅床を掀倒し、大衆を喝散するも、他も亦た顧みず。天の高きが如く、地の厚きに似たり。溈山若し天下の人の舌頭を坐断する底の手脚無くんば、時に他を験すること也た大いに難からん。若し是れ他の一千五百人の善知識にあらずんば、這裏に到つて也た分疎不下ならん。溈山は是れ籌を帷幄に運らし、勝つことを千里に決す。
現代語訳
修行者の多くは「溈山は徳山を恐れたのだ」と言う。何の関わりがあろうか。溈山も少しも慌てなかった。だから「知恵が鳥にまされば鳥を捕らえ、知恵が獣にまされば獣を捕らえ、知恵が人にまされば人を捕らえる」と言うのだ。このような禅を参得したなら、大地じゅうの森羅万象も、天堂も地獄も、草も人も畜生も、一時に一喝を浴びせてきても、彼は少しも構わない。禅床をひっくり返し、大衆を喝して散らしても、彼は振り向きもしない。天のように高く、地のように厚い。溈山にもし天下の人の舌を断ち切るほどの手並みがなかったなら、その時に徳山を験すことはきわめて難しかったろう。もし千五百人を率いる善知識でなかったなら、ここに至って申し開きができなかったろう。溈山は本陣の幕の中で策をめぐらし、千里の彼方で勝ちを決めたのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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史記 項羽本紀沛公張良に謂ひて曰く、「此の道より吾が軍に至るは、二十里に過ぎざるのみ。我軍中に至るを度りて、公乃ち入れ。」と。沛公已に去り、間(ひそ)かに軍中に至る、張良入りて謝して、曰く、「沛公桮杓に勝へず、辞する能はず。謹みて臣良をして白璧一双を奉じ、再拝して大王の足下に献じ、玉斗一双もて、再拝して大将軍の足下に奉ぜしむ。」と。項王曰く、「沛公安くに在る。」と。良曰く、「大王之を督過するに意有りと聞き、身を脱して独り去り、已に軍に至れり。」と。項王則ち璧を受け、之を坐上に置く。亜父玉斗を受け、之を地に置き、剣を抜きて撞きて之を破りて、曰く、「唉(ああ)、豎子与に謀るに足らず。項王の天下を奪ふ者は、必ず沛公ならん、吾が属今に之が虜と為らん。」と。沛公軍に至り、立ちどころに曹無傷を誅殺す。居ること数日、項羽兵を引きて西のかた咸陽を屠り、秦の降王子嬰を殺し、秦の宮室を焼く、火三月滅せず。其の貨宝婦女を収めて東す。人或いは項王に説きて曰く、「関中は山河を阻てて四塞、地肥饒なり、都して以て霸たるべし。」と。項王秦の宮皆以に焼けて残破せるを見、又心に懐ひて東帰せんことを思欲し、曰く、「富貴にして故郷に帰らざるは、繡を衣て夜行くが如し、誰か之を知る者ぞ。」と。説く者曰く、「人言ふ楚人は沐猴にして冠するのみと、果たして然り。」と。項王之を聞き、説く者を烹る。項王人をして命を懐王に致さしむ。懐王曰く、「約の如くせよ。」と。乃ち懐王を尊びて義帝と為す。項王自ら王たらんと欲し、先づ諸将相を王とす。謂ひて曰く、「天下初めて難を発せし時、仮に諸侯の後を立てて以て秦を伐つ。然れども身堅を被り鋭を執りて事を首め、野に暴露すること三年、秦を滅ぼし天下を定むる者は、皆将相諸君と籍との力なり。義帝は功無しと雖も、故より当に其の地を分かちて之を王とすべし。」と。諸将皆曰く、「善し。」と。乃ち天下を分かち、諸将を立てて侯王と為す。
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