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兵術要訓抄録 / 内魔と外魔

魔に大魔あり小魔あり、大魔とは內魔なり、小魔は外魔也、大魔の障碍とは魔にあらず、我に有るなり、我慢するときは人を侮る、人を侮れば變を生ず、是則我より生ずるの大魔にあらずや、大敵を恐れず小敵を侮らず是達人なり、又小魔とは惡魔なり、惡魔の障碍は有事すくなし、たとひあるといへども、外魔にて外より來るものゝゆへ我に透なければ恐るゝヿなし、又惡魔の障碍にあふと云も、我慢心より障碍にある事なれば我大魔と云、內魔が小魔の外魔を引出すなれば、皆我慢心より出る事也、大魔の障碍は內に有るゆへ暫も我身をはなるゝヿなし、我より出たる大魔なれば目にこそ見へね時々刻々障碍をなす也、爰をよく知りて聖人の戒に、天の作孽は猶さるべし、自なせる孽はのがるべからずといへる處を暫もわするべからず、古の名將英雄も外魔には勝るれども、やゝもすれば此內魔の大魔王には身を亡し國を失ひ名を下し玉ふ也、義經公義貞公などの類にて考ふべし、然るをまして末世の下凡吾々しき、猶々百千倍の禁を加へて愼むべきは、此大魔の障碍なるべし、

新字:魔に大魔あり小魔あり、大魔とは内魔なり、小魔は外魔也、大魔の障碍とは魔にあらず、我に有るなり、我慢するときは人を侮る、人を侮れば変を生ず、是則我より生ずるの大魔にあらずや、大敵を恐れず小敵を侮らず是達人なり、又小魔とは悪魔なり、悪魔の障碍は有事すくなし、たとひあるといへども、外魔にて外より来るものゝゆへ我に透なければ恐るゝヿなし、又悪魔の障碍にあふと云も、我慢心より障碍にある事なれば我大魔と云、内魔が小魔の外魔を引出すなれば、皆我慢心より出る事也、大魔の障碍は内に有るゆへ暫も我身をはなるゝヿなし、我より出たる大魔なれば目にこそ見へね時々刻々障碍をなす也、爰をよく知りて聖人の戒に、天の作孽は猶さるべし、自なせる孽はのがるべからずといへる処を暫もわするべからず、古の名将英雄も外魔には勝るれども、やゝもすれば此内魔の大魔王には身を亡し国を失ひ名を下し玉ふ也、義経公義貞公などの類にて考ふべし、然るをまして末世の下凡吾々しき、猶々百千倍の禁を加へて慎むべきは、此大魔の障碍なるべし、

書き下し

魔に大魔あり小魔あり、大魔とは內魔なり、小魔は外魔也、大魔の障碍とは魔にあらず、我に有るなり、我慢するときは人を侮る、人を侮れば變を生ず、是則我より生ずるの大魔にあらずや、大敵を恐れず小敵を侮らず是達人なり、又小魔とは惡魔なり、惡魔の障碍は有事すくなし、たとひあるといへども、外魔にて外より來るものゝゆへ我に透なければ恐るゝヿなし、又惡魔の障碍にあふと云も、我慢心より障碍にある事なれば我大魔と云、內魔が小魔の外魔を引出すなれば、皆我慢心より出る事也、大魔の障碍は內に有るゆへ暫も我身をはなるゝヿなし、我より出たる大魔なれば目にこそ見へね時々刻々障碍をなす也、爰をよく知りて聖人の戒に、天の作孽は猶さるべし、自なせる孽はのがるべからずといへる處を暫もわするべからず、古の名將英雄も外魔には勝るれども、やゝもすれば此內魔の大魔王には身を亡し國を失ひ名を下し玉ふ也、義經公義貞公などの類にて考ふべし、然るをまして末世の下凡吾々しき、猶々百千倍の禁を加へて愼むべきは、此大魔の障碍なるべし、

現代語訳

魔には大魔と小魔があります。大魔とは内魔であり、小魔は外魔です。大魔の障りとは、魔ではなく、自分にあるのです。我慢すれば人を侮り、人を侮れば変事を生じます。これこそ、自分から生じる大魔ではないでしょうか。大敵を恐れず、小敵を侮らないのが達人です。また、小魔とは悪魔です。悪魔の障りがあることは少なく、たとえあるといっても、外魔で外から来るものですから、自分に隙がなければ恐れることはありません。また、悪魔の障りにあうというのも、自分の慢心から障りにあうことですから、これを自分の大魔といい、内魔が小魔の外魔を引き出すのですから、みな我慢の心から出ることです。大魔の障りは内にあるために、しばらくも我が身を離れることがありません。自分から出た大魔ですから、目には見えなくとも、時々刻々に障りをなします。ここをよく知って、聖人の戒めに、天のなす禍はなお避けられるが、自らなす禍は逃れられない、とあるところを、しばらくも忘れてはなりません。昔の名将英雄も、外魔には勝っても、ともすればこの内魔の大魔王に、身を亡ぼし、国を失い、名を落とされました。義経公、義貞公などの類で考えるとよいでしょう。ましてや末世の凡庸な私どもは、いっそう百千倍の戒めを加えて慎むべきは、この大魔の障りです。

解説

魔の障りを、外から来る小魔と、自分の我慢、つまり慢心から生じる大魔に分け、本当の敵は内にあると説く章句です。慢心は人を侮らせ、侮りが変事を呼び、外の災いまでも引き出すとします。聖人の戒めとして自ら招いた禍は逃れられないという言葉が引かれ、義経や義貞のような名将も内魔に敗れたと述べますが、評価は書中の見立てです。経営でも、成功後の慢心や独断が組織を傾けることは少なくありません。管理職は実績が積み上がったときほど自分を点検したいところです。

この章句が説くこと

内魔外魔慢心我慢自ら招く禍名将の戒め

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