兵法家伝書 / 新陰流外物進履橋夜討の二の目
夜討二之目置樣之事 一 夜討にも二ノ目を專にす。武功有る者其外宗徒の勇士をすぐつて二之目を少引さがつて或は一丁二丁三丁に二ノ目を立て先陣縣て思程利を得候はゞ猶の事、若討損じ先手敗軍に及候時味方をすゝめ、軍には勝たるぞ無二無三にかゝつて討破べしと諸卒に下智、二陣の將自ら鑓を取り先に進み、急にもどりかへし勝負を決すべき也。始終は不知先陣を追崩し、備を亂し追かゝらば十に九つ二之目にて勝もの也。敵の將も武功の者ならば長追を制し、二の目を思ひ早く軍を揚べし。然る時は味方の二の目の堅陣必すゝむべからず。軍を心に持て備を亂さず。敵の模樣を見合靜に人數を引揚ぐべき也。若其內敵の變あらば急に可討。是も遠く追べからず。され共其地の形勢急に追て利有所、或岩石に敵の行かゝり或細道或沼等あらば、急に難所に可追縣也。併敵のふし有事を考べし。敵のふしに不入樣によく〱思慮をめぐらし油斷すべからざるなり。
新字:夜討二之目置様之事 一 夜討にも二ノ目を専にす。武功有る者其外宗徒の勇士をすぐつて二之目を少引さがつて或は一丁二丁三丁に二ノ目を立て先陣県て思程利を得候はゞ猶の事、若討損じ先手敗軍に及候時味方をすゝめ、軍には勝たるぞ無二無三にかゝつて討破べしと諸卒に下智、二陣の将自ら鑓を取り先に進み、急にもどりかへし勝負を決すべき也。始終は不知先陣を追崩し、備を乱し追かゝらば十に九つ二之目にて勝もの也。敵の将も武功の者ならば長追を制し、二の目を思ひ早く軍を揚べし。然る時は味方の二の目の堅陣必すゝむべからず。軍を心に持て備を乱さず。敵の模様を見合静に人数を引揚ぐべき也。若其内敵の変あらば急に可討。是も遠く追べからず。され共其地の形勢急に追て利有所、或岩石に敵の行かゝり或細道或沼等あらば、急に難所に可追県也。併敵のふし有事を考べし。敵のふしに不入様によく〱思慮をめぐらし油断すべからざるなり。
書き下し
夜討二之目置樣之事 一 夜討にも二ノ目を專にす。武功有る者其外宗徒の勇士をすぐつて二之目を少引さがつて或は一丁二丁三丁に二ノ目を立て先陣縣て思程利を得候はゞ猶の事、若討損じ先手敗軍に及候時味方をすゝめ、軍には勝たるぞ無二無三にかゝつて討破べしと諸卒に下智、二陣の將自ら鑓を取り先に進み、急にもどりかへし勝負を決すべき也。始終は不知先陣を追崩し、備を亂し追かゝらば十に九つ二之目にて勝もの也。敵の將も武功の者ならば長追を制し、二の目を思ひ早く軍を揚べし。然る時は味方の二の目の堅陣必すゝむべからず。軍を心に持て備を亂さず。敵の模樣を見合靜に人數を引揚ぐべき也。若其內敵の變あらば急に可討。是も遠く追べからず。され共其地の形勢急に追て利有所、或岩石に敵の行かゝり或細道或沼等あらば、急に難所に可追縣也。併敵のふし有事を考べし。敵のふしに不入樣によく〱思慮をめぐらし油斷すべからざるなり。
現代語訳
夜討ちの二の目の置きようのことです。一、夜討ちにも二の目を専らにします。武功のある者、そのほか宗徒の勇士を選んで、二の目を少し引き下がって、あるいは一町、二町、三町に立て、先陣が駆けて思うほど利を得ればなおのこと、もし討ち損じて先手が敗軍に及んだ時には、味方を勧め、「軍には勝ったぞ、無二無三に駆かって討ち破るべし」と諸卒に下知し、二陣の将が自ら鑓を取って先に進み、急に取って返して勝負を決めるべきです。始終は知らず、先陣を追い崩し、備えを乱して追いかかれば、十に九つは二の目で勝つものです。敵の将も武功の者であれば、長追いを制し、二の目を思って早く軍を揚げるでしょう。その時は、味方の二の目の堅陣は決して進んではなりません。軍を心に持って備えを乱さず、敵の様子を見合わせて静かに人数を引き揚げるべきです。もしその内に敵に変化があれば、急に討つべきです。これも遠く追ってはいけません。けれども、その地の形勢が急に追って利のある所、あるいは岩石に敵が行きかかる、あるいは細道、あるいは沼などがあれば、急に難所に追い駆けるべきです。ただし、敵の伏せがあることを考えるべきです。敵の伏せに入らないように、よくよく思慮をめぐらし、油断してはなりません。
解説
この章句が説くこと
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