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兵法家伝書 / 新陰流外物進履橋天狗たをし

天狗たをしの事 一 天狗たをしの事。第一城を取に用。居國の本城亦は付城陣城等にも其心得なくんば有べからず。野あひの合戰にも此意得を可用なり。たとへば山城にて敵を受候に追手の登り坂又はからめ手の登り坂初め、城取の時分大石大木石火矢大筒等を打かけ、大利あらん所を兼て其かんがへにて道を付申候儀肝要也。さ候て此道に敵押寄候とき一丁二丁に近々とよせ付、石火矢大筒を以てひた〱と打掛將碁たをしのごとくに打たをし、夫より近々は大木大石をなげかけ、大利を得る時は、重て此攻口には敵向はざるもの也。然時は此持口の人數を右の口には少殘し置き、足並よく敵の攻安き所に此人數を加へ置き防ぐ時は、士卒も力を得利多きものなり。野軍の懸合にも此意を以て敵のむらがり來るところを大筒にて打立、備へ亂るゝ時或は馬武者亦は歩行武者にてもかけむかひ鑓を合せ勝負有べき者也。

新字:天狗たをしの事 一 天狗たをしの事。第一城を取に用。居国の本城亦は付城陣城等にも其心得なくんば有べからず。野あひの合戦にも此意得を可用なり。たとへば山城にて敵を受候に追手の登り坂又はからめ手の登り坂初め、城取の時分大石大木石火矢大筒等を打かけ、大利あらん所を兼て其かんがへにて道を付申候儀肝要也。さ候て此道に敵押寄候とき一丁二丁に近々とよせ付、石火矢大筒を以てひた〱と打掛将碁たをしのごとくに打たをし、夫より近々は大木大石をなげかけ、大利を得る時は、重て此攻口には敵向はざるもの也。然時は此持口の人数を右の口には少残し置き、足並よく敵の攻安き所に此人数を加へ置き防ぐ時は、士卒も力を得利多きものなり。野軍の懸合にも此意を以て敵のむらがり来るところを大筒にて打立、備へ乱るゝ時或は馬武者亦は歩行武者にてもかけむかひ鑓を合せ勝負有べき者也。

書き下し

天狗たをしの事 一 天狗たをしの事。第一城を取に用。居國の本城亦は付城陣城等にも其心得なくんば有べからず。野あひの合戰にも此意得を可用なり。たとへば山城にて敵を受候に追手の登り坂又はからめ手の登り坂初め、城取の時分大石大木石火矢大筒等を打かけ、大利あらん所を兼て其かんがへにて道を付申候儀肝要也。さ候て此道に敵押寄候とき一丁二丁に近々とよせ付、石火矢大筒を以てひた〱と打掛將碁たをしのごとくに打たをし、夫より近々は大木大石をなげかけ、大利を得る時は、重て此攻口には敵向はざるもの也。然時は此持口の人數を右の口には少殘し置き、足並よく敵の攻安き所に此人數を加へ置き防ぐ時は、士卒も力を得利多きものなり。野軍の懸合にも此意を以て敵のむらがり來るところを大筒にて打立、備へ亂るゝ時或は馬武者亦は歩行武者にてもかけむかひ鑓を合せ勝負有べき者也。

現代語訳

天狗倒しのことです。一、天狗倒しのこと。第一には城を取るのに用います。居国の本城、あるいは付城や陣城などにも、その心得がなければあってはなりません。野合いの合戦にも、この心得を用いるべきです。たとえば山城で敵を受ける時に、追手の登り坂、あるいは搦手の登り坂をはじめ、城取りの時分に大石・大木、石火矢・大筒などを打ちかけて大きな利が得られる所を、かねてその考えで道を付けておくことが肝要です。そうしておけば、この道に敵が押し寄せた時、一町、二町に近々と寄せ付け、石火矢・大筒でひたひたと打ちかけ、将棋倒しのように打ち倒し、それより近くは大木・大石を投げかけ、大きな利を得た時は、重ねてこの攻め口には敵が向かわなくなるものです。その時はこの持ち口の人数を、右の口には少し残しておき、足並みよく敵の攻めやすい所にこの人数を加え置いて防ぐ時は、士卒も力を得て利が多いものです。野戦の掛け合いにも、この心得で、敵が群がり来るところを大筒で撃ち立て、備えが乱れた時に、あるいは馬武者、または歩行武者でも駆け向かって鑓を合わせ、勝負があるべきものです。

解説

天狗倒しは、山城の坂道などに大石や大木、大筒を仕掛け、押し寄せる敵を将棋倒しのように打ち倒す備えです。要点は、攻められてから考えるのではなく、築城の時から、敵が来る道を意図して作っておくことにあります。一度大きな損害を与えれば、敵は同じ攻め口に向かわなくなり、守りの人数を他の弱い所に回せるという効果も述べられます。現代の組織では、起きやすい失敗の入り口にあらかじめ防御を置き、成功した対策を他の場所へ振り向ける運営に近い考え方です。守りを均等に薄く配るより、敵を誘導して強みの出る場所に集めるという発想が示されています。

この章句が説くこと

天狗倒し山城攻め口誘導備え兵法家伝書

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