兵法家伝書 / 新陰流外物進履橋馬上の者を突き切る
馬上之者突切事 一 馬上の者つき切事。歩立にて馬上の者相手の時意得、敵鑓にても刀にても馬の向に立合候儀、古來より嫌候事。馬をむかふに請候ては敵急に乘懸候へば馬にふみたをされ候間、右にても左にても歩行立にて馬武者を脇に請、願くは敵の右に立、馬の足をなぎたをし、落候後の勝負尤に候。鑓合の時は馬武者の鑓を右に用させ、突切候事も敵の左によせ勝負致物にて候。口傳なく候ては難傳也。
新字:馬上之者突切事 一 馬上の者つき切事。歩立にて馬上の者相手の時意得、敵鑓にても刀にても馬の向に立合候儀、古来より嫌候事。馬をむかふに請候ては敵急に乗懸候へば馬にふみたをされ候間、右にても左にても歩行立にて馬武者を脇に請、願くは敵の右に立、馬の足をなぎたをし、落候後の勝負尤に候。鑓合の時は馬武者の鑓を右に用させ、突切候事も敵の左によせ勝負致物にて候。口伝なく候ては難伝也。
書き下し
馬上之者突切事 一 馬上の者つき切事。歩立にて馬上の者相手の時意得、敵鑓にても刀にても馬の向に立合候儀、古來より嫌候事。馬をむかふに請候ては敵急に乘懸候へば馬にふみたをされ候間、右にても左にても歩行立にて馬武者を脇に請、願くは敵の右に立、馬の足をなぎたをし、落候後の勝負尤に候。鑓合の時は馬武者の鑓を右に用させ、突切候事も敵の左によせ勝負致物にて候。口傳なく候ては難傳也。
現代語訳
馬上の者を突き切ることです。一、馬上の者を突き切ること。歩立ちで馬上の者が相手の時の心得です。敵が鑓でも刀でも、馬の正面に立ち合うことは、古来より嫌うことです。馬を向こうに受ければ、敵が急に乗りかけた時に馬に踏み倒されますので、右でも左でも、歩行立ちで馬武者を脇に受け、願わくは敵の右に立って、馬の足を薙ぎ倒し、落ちた後で勝負するのがもっともです。鑓合いの時は、馬武者の鑓を右に使わせ、突き切ることも敵の左に寄せて勝負するものです。口伝がなくては伝えがたいことです。
解説
この章句が説くこと
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『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「馬上より下の者を切り突く」馬上より下の者切突心持の事 一 馬上より歩行武者を切るには、甲一所又は小手の上ならでは無之候。歩行立の者も甲小手の上はづれならでは切突れ候所無之候得ば、餘の所は手明にて候。此心得を以て時に應じ掛なやまし、或は馬にふみたをさせ、起しも不立、馬より下り立、落重りて首を取候儀常の習にて候。馬上より一圓に歩行武者を切候儀は難成物にて候。歩行より馬武者を切候事も難成候故、多くは馬より下り立、鑓を取り立向ひ勝負をいたし候儀多き事に候。意得可有事也。紙面にては難傳候也。
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『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「馬上にて組み付かれた時」馬上にて組取付れ候時之心持同取付所之事 一 馬上にて組取つかれ候時の心持の事。願くは相手を左に請候儀肝要也。取付所は何方にても同敵のわたかみの邊手掛りに取り、鐙の鼻を八文字に踏成し、馬をあをり敵を馬より引落候樣の心持肝要也。相手は馬を離れ候ては何の役も無之物に候。さりながら取付候時、相手左の手にて取付、右にて脇指を拔、何方にてもあたるを幸に突心懸致物にて候。此儀を油斷なく心がけ、取付とひとしく早引落し候心持肝要にて候。又突所を逃候心持油斷有まじく候。第一は鐙の蹴樣に心得可有事。
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『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「せばき所にて鑓長刀を取り直す」せばき所にて鑓長刀取直切突心持の事 一 せばき所又は藪しげみなどの內にて跡より急に追かけ參候時分、鑓長刀十文字等取直し候樣成候程に候へば、無申事候。若其段不叶に長道具にさへられ、兎や角とうろたへ候內に敵風と近付不慮の負有之物の由に候。相手急に仕懸取直す隙もなく候はゞ鑓十文字などは元來の儀、長刀にてもうの首をとり共儘跡に返し、鑓の石突を正身と心得候て勝負をいたすものにて候。鑓十文字等はあり、式の勝負にさのみは替りなきものゝ由師の說に候。十文字にて入身の時、す(素)鑓にて被入候も負にはなりがたきものゝ由候。
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『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「脇指にて突く樣」脇指にて突樣突所之事 小脇指にては勿論突事を專にし、切事は一圓なき者なり。中脇指長脇指にても近き者は切ル心得は惡也。切ル時は取らるゝ事も又切レざる事も有。しつ(失)多き物也。近き者は何レ突候て、互に指違候には無迯、此覺悟に候得ば心に勇も出來、所作もけなげに有之もの也。又近ク候とても、中脇指などにては切る時も有べし。突く所は願くは腹の內可然也。是は不定行掛次第兩のかいな股には突かぬもの也。亦相手も此心得にて近く候得ば突事を好候間、夫を心にかけ相手の太刀さきを逃し長短の一味の心持にて無刀に取候義心に縣べき也。手前より突時も相手よりとられざる心持肝要也。何紙面には顯がたし一人に脇指にて掛り取所を逃樣色々有之。前のヶ條に同じ。口傳にあらざれば書載には難成。
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『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「側へ寄る物」側へ寄ル物に心の付所之事 一 側へよる物の義、人は不及申に、何にても心の付所是も前に同じ。或は犬猫にてもまいるものは何とぞ我左へ置候心もち肝要にて候。人は不及沙汰けだものにても右に置候て飛縣り候へば驚候儀も候て見苦敷物にて候。左に置候へば右程は無之候。是も右に置候はゞ不叶時節は何程の敵にても右に置心持に油斷有間敷左右の心持第一。
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