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兵法家伝書 / 無刀之卷大機大用機を内に具える

常々內に機を具せざれば、大用あらはれまじき也、座敷になをるとも上を先見、左右を見て、上より自然落る物あらば心懸ケ、戸障子のきはになをるとも、ころびかせんと心にかけ、或は貴人高位の御座近く伺候之時、自然の不慮の事や出來せんと、心懸ケ、門戸出入とも出入に付て心をすて、常々心にかくる、是皆機なり、此機常に內にある故に、自然の時、きどくの早速が出合是大用と云、しかれども此機がいまだ熟せざる時は、用があらはれぬ也、万の道に心懸がつもる功がかさなれば、機が熟して大用がはつする也、機がこり堅り居たれば、用がなき也、熟すれば全身全躰にのびひろごり、手にも足にも耳にもその所々にて、大用がはつする也、

新字:常々内に機を具せざれば、大用あらはれまじき也、座敷になをるとも上を先見、左右を見て、上より自然落る物あらば心懸ケ、戸障子のきはになをるとも、ころびかせんと心にかけ、或は貴人高位の御座近く伺候之時、自然の不慮の事や出来せんと、心懸ケ、門戸出入とも出入に付て心をすて、常々心にかくる、是皆機なり、此機常に内にある故に、自然の時、きどくの早速が出合是大用と云、しかれども此機がいまだ熟せざる時は、用があらはれぬ也、万の道に心懸がつもる功がかさなれば、機が熟して大用がはつする也、機がこり堅り居たれば、用がなき也、熟すれば全身全体にのびひろごり、手にも足にも耳にもその所々にて、大用がはつする也、

書き下し

常々內に機を具せざれば、大用あらはれまじき也、座敷になをるとも上を先見、左右を見て、上より自然落る物あらば心懸ケ、戸障子のきはになをるとも、ころびかせんと心にかけ、或は貴人高位の御座近く伺候之時、自然の不慮の事や出來せんと、心懸ケ、門戸出入とも出入に付て心をすて、常々心にかくる、是皆機なり、此機常に內にある故に、自然の時、きどくの早速が出合是大用と云、しかれども此機がいまだ熟せざる時は、用があらはれぬ也、万の道に心懸がつもる功がかさなれば、機が熟して大用がはつする也、機がこり堅り居たれば、用がなき也、熟すれば全身全躰にのびひろごり、手にも足にも耳にもその所々にて、大用がはつする也、

現代語訳

常々内に機を具えていなければ、大用は現れないであろう。座敷に座るにも、まず上を見、左右を見て、上から自然に落ちる物があれば心にかけ、戸障子の際に座るにも、倒れかかるかと心にかけ、あるいは貴人高位の御座近くに伺候するときも、万一思いがけないことが起こるかと心にかけ、門や戸の出入りでも、出入りにつけて心を据え、常々心にかける。これはみな機である。この機が常に内にあるので、万一のとき、奇特の早速に出会う。これを大用という。しかしこの機がまだ熟していないときは、用が現れない。万の道に心がけが積もり功が重なれば、機が熟して大用が発する。機がこり固まっているときは、用がない。熟すれば全身全体に伸び広がり、手にも足にも耳にも、その所々で大用が発するのである。

解説

大用は日常の細かな用心の積み重ねから生まれる、というのがこの段の要点です。座敷で上を見て落下物を気にする、戸障子の際で倒れを気にする、貴人の前で不慮の事に備えるなど、当時の具体的な心がけが機として挙げられます。この機が内にあるから、万一のときに早速の働きが出ます。ただし機が熟さず固まっていると用が現れず、熟すれば全身に広がるとして、機の成熟を語ります。現代の職場でいえば、日頃のリスクの洗い出しや確認の習慣が、緊急時の素早い対応を支えている関係です。備えは形だけでなく、身についてこそ働きます。

この章句が説くこと

機用心備え熟する不慮兵法家伝書

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