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配所残筆 / 配所殘筆8

大猷院樣御前へ祖心昵近仕られ候時分、祖心被申候者、其方義御次て御座候て具達上聞候、折に其方事上意有之間、必家中へ奉公に罷出候事無用に可仕候、何卒御家人に罷成候やうに取持可被申由被申候、松平越中守殿御念頃故、右之次第具に御內意申上候へば、一段之事に候、表向越中守殿御取持可被下候、其方事松平伊豆守殿兼而能御存被成候間、當公方樣へ被召出候樣に仕候はゞ、早速首尾可仕候、祖心へも其段御相談可被成、先酒井日向守殿へも被仰遣候間、掛御目置候へと被仰候、御家老三輪權右衞門を差添られ、日向守殿へ拙者を遊され懸御目候、其後越中守殿仰られ候は、酒井空印公へ拙者事具に御物語被成置候間、左樣に心得候樣に被仰候、其節空印公事上意にて祖心下屋敷へ振舞申され候時分、拙者も被召出、御念頃之上、越中守殿拙者噂具に被仰候由御挨拶被成候、久世和州公上意にて祖心振舞被成、道春被召寄、老子經之講釋御座候時分。和州公被仰下、拙者も右之末座へ被召出候、祖心後に被申候者、

新字:大猷院様御前へ祖心昵近仕られ候時分、祖心被申候者、其方義御次て御座候て具達上聞候、折に其方事上意有之間、必家中へ奉公に罷出候事無用に可仕候、何卒御家人に罷成候やうに取持可被申由被申候、松平越中守殿御念頃故、右之次第具に御内意申上候へば、一段之事に候、表向越中守殿御取持可被下候、其方事松平伊豆守殿兼而能御存被成候間、当公方様へ被召出候様に仕候はゞ、早速首尾可仕候、祖心へも其段御相談可被成、先酒井日向守殿へも被仰遣候間、掛御目置候へと被仰候、御家老三輪権右衛門を差添られ、日向守殿へ拙者を遊され懸御目候、其後越中守殿仰られ候は、酒井空印公へ拙者事具に御物語被成置候間、左様に心得候様に被仰候、其節空印公事上意にて祖心下屋敷へ振舞申され候時分、拙者も被召出、御念頃之上、越中守殿拙者噂具に被仰候由御挨拶被成候、久世和州公上意にて祖心振舞被成、道春被召寄、老子経之講釈御座候時分。和州公被仰下、拙者も右之末座へ被召出候、祖心後に被申候者、

書き下し

大猷院樣御前へ祖心昵近仕られ候時分、祖心被申候者、其方義御次て御座候て具達上聞候、折に其方事上意有之間、必家中へ奉公に罷出候事無用に可仕候、何卒御家人に罷成候やうに取持可被申由被申候、松平越中守殿御念頃故、右之次第具に御內意申上候へば、一段之事に候、表向越中守殿御取持可被下候、其方事松平伊豆守殿兼而能御存被成候間、當公方樣へ被召出候樣に仕候はゞ、早速首尾可仕候、祖心へも其段御相談可被成、先酒井日向守殿へも被仰遣候間、掛御目置候へと被仰候、御家老三輪權右衞門を差添られ、日向守殿へ拙者を遊され懸御目候、其後越中守殿仰られ候は、酒井空印公へ拙者事具に御物語被成置候間、左樣に心得候樣に被仰候、其節空印公事上意にて祖心下屋敷へ振舞申され候時分、拙者も被召出、御念頃之上、越中守殿拙者噂具に被仰候由御挨拶被成候、久世和州公上意にて祖心振舞被成、道春被召寄、老子經之講釋御座候時分。和州公被仰下、拙者も右之末座へ被召出候、祖心後に被申候者、

現代語訳

大猷院様の御前に祖心が近侍していたころ、祖心が申すには、「そなたのことは機会があって詳しく上聞に達した。折に触れてそなたについて上意があるはずなので、決して他家に奉公に出ることは無用にしなさい。何とか御家人になれるよう取り持ちましょう」とのことでした。松平越中守殿がご懇意でしたので、右の次第を詳しく内々に申し上げると、「それは結構なことだ。表向きは越中守が取り持とう。そなたのことは松平伊豆守殿がかねてよくご存じだから、当公方様に召し出されるようにすれば、すぐに首尾よくいくだろう。祖心にもその旨をご相談なさい。まず酒井日向守殿へも言い遣わしてあるので、お目にかかっておきなさい」と仰せられました。ご家老の三輪権右衛門を添えて、日向守殿のもとへ私を遣わされ、お目にかかりました。その後、越中守殿が仰せられるには、酒井空印公へ私のことを詳しくお話ししてあるから、そう心得ておくようにとのことでした。そのとき空印公は上意により祖心の下屋敷で振る舞いを受けられ、私も召し出され、ご念入りなお言葉のうえ、越中守殿が私のことを詳しく噂されたとのご挨拶をいただきました。久世和州公が上意により祖心の振る舞いをなさり、道春を召し寄せて老子経の講釈があったとき、和州公が仰せ下され、私もその末座に召し出されました。祖心は後に申しました。

解説

幕府に召し出される可能性が生まれてくる段です。祖心が上聞に達したと告げて他家への奉公を止め、松平越中守殿が表向きの取り持ちを引き受け、酒井日向守殿らへ引き合わせます。素行は、段取りを教えてくれる年長者の指示に従い、一つずつ挨拶を重ねています。大事な話ほど、窓口を通して順序を踏んで進めるという運びです。就職や昇進で、推薦者の助言どおりに根回しを進めていく場面に通じ、誰に先に会うかの順を守る大切さも読み取れます。

この章句が説くこと

推薦根回し上聞取り持ち縁配所残筆

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