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配所残筆 / 配所殘筆9

此段皆上意に候間、難有可奉存候由被申聞候、卯年二月御近習番頭駒井左京殿御事阿部伊勢守殿(其比式部と被申御小性被仕候)を御賴被成、拙者弟子に被成、兵學被成御聞度由被仰候間、幸に御近所に北條安房守殿居被申候間、是に御相傳可然と達而御斷申上候へ共、思召入有之由被仰候間、任御意候而參候所、急度被成候御馳走にて、兵書御聞被成、早々御登城候、御兩所の御咄は拙者不承候、脇にて承候へば、右右京殿被召寄候事上意にて御座候由承候、此段具に祖心へ物語仕候へば、大方上意にて可有之候間、彌以諸事愼、家中抔へ奉公は不入義に可存之旨被申候、其後薨御被爲成候、松平越中守殿其年極月御逝去に候、翌辰之年淺野內匠頭拙者え直に約束被仕候て、色々念頃之上、知行千石被宛行候、拙者儀相應之奉公被申付候樣に達而賴申候へ共、いかゞ被存候哉、番並使者等一度も不被申付候、定て拙者不調法者故にて可有之候、稽古日を定置、我等罷出候時分は馳走仕られ候て、浪人分に仕られ候、

新字:此段皆上意に候間、難有可奉存候由被申聞候、卯年二月御近習番頭駒井左京殿御事阿部伊勢守殿(其比式部と被申御小性被仕候)を御頼被成、拙者弟子に被成、兵学被成御聞度由被仰候間、幸に御近所に北条安房守殿居被申候間、是に御相伝可然と達而御断申上候へ共、思召入有之由被仰候間、任御意候而参候所、急度被成候御馳走にて、兵書御聞被成、早々御登城候、御両所の御咄は拙者不承候、脇にて承候へば、右右京殿被召寄候事上意にて御座候由承候、此段具に祖心へ物語仕候へば、大方上意にて可有之候間、弥以諸事慎、家中抔へ奉公は不入義に可存之旨被申候、其後薨御被為成候、松平越中守殿其年極月御逝去に候、翌辰之年浅野内匠頭拙者え直に約束被仕候て、色々念頃之上、知行千石被宛行候、拙者儀相応之奉公被申付候様に達而頼申候へ共、いかゞ被存候哉、番並使者等一度も不被申付候、定て拙者不調法者故にて可有之候、稽古日を定置、我等罷出候時分は馳走仕られ候て、浪人分に仕られ候、

書き下し

此段皆上意に候間、難有可奉存候由被申聞候、卯年二月御近習番頭駒井左京殿御事阿部伊勢守殿(其比式部と被申御小性被仕候)を御賴被成、拙者弟子に被成、兵學被成御聞度由被仰候間、幸に御近所に北條安房守殿居被申候間、是に御相傳可然と達而御斷申上候へ共、思召入有之由被仰候間、任御意候而參候所、急度被成候御馳走にて、兵書御聞被成、早々御登城候、御兩所の御咄は拙者不承候、脇にて承候へば、右右京殿被召寄候事上意にて御座候由承候、此段具に祖心へ物語仕候へば、大方上意にて可有之候間、彌以諸事愼、家中抔へ奉公は不入義に可存之旨被申候、其後薨御被爲成候、松平越中守殿其年極月御逝去に候、翌辰之年淺野內匠頭拙者え直に約束被仕候て、色々念頃之上、知行千石被宛行候、拙者儀相應之奉公被申付候樣に達而賴申候へ共、いかゞ被存候哉、番並使者等一度も不被申付候、定て拙者不調法者故にて可有之候、稽古日を定置、我等罷出候時分は馳走仕られ候て、浪人分に仕られ候、

現代語訳

「これはみな上意ですから、ありがたく存じなさい」と申し聞かされました。卯年の二月、御近習番頭の駒井左京殿が、阿部伊勢守殿(そのころは式部と称して御小姓を務めておられた)を通じて私を弟子とし、兵学をお聞きになりたいと仰せられたので、幸い近所に北条安房守殿がおられるから、そちらにご相伝いただくのがよいと、強くお断りしましたが、思し召しがあるとのことなので、ご意に任せて参ったところ、格別のおもてなしで兵書をお聞きになり、すぐに登城されました。お二方のお話は私は承っておりません。脇で聞いたところでは、左京殿を召し寄せられたのは上意であったと承りました。このことを祖心に詳しく話すと、おおかた上意であろうから、いよいよ諸事を慎み、他家への奉公は不要と心得るようにと申しました。その後、薨御あそばされ、松平越中守殿もその年の十二月にご逝去になりました。翌辰の年、浅野内匠頭が私に直接ご約束になり、いろいろ念入りなうえで、知行千石を宛行われました。私は相応の奉公を申し付けてくださるよう強くお頼みしましたが、どう思われたのか、番並や使者などは一度も申し付けられませんでした。きっと私が不調法者だからでしょう。稽古日を定めて、私が参るときには馳走してくださり、浪人分として遇されました。

解説

前段の祖心の言葉から始まり、幕府に召される道が開くかに見えた矢先の転換が語られます。後ろ盾だった方々が相次いで世を去った後、浅野内匠頭から知行千石を約束されて身を寄せますが、素行は相応の奉公を強く頼んでも、番や使者の役は一度も命じられず、浪人分として遇されました。素行はこれを自分が不調法者だからだろうと受け止めています。待遇は与えられても役割が与えられない状況です。報酬と役割が釣り合わない環境で、自分の位置をどう理解するかを考えさせる段です。

この章句が説くこと

後ろ盾浪人分知行奉公役割配所残筆

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