群書治要 / 『群書治要』漢書・大禄を受けた者は利を争うな
夫天亦有所分與、與上齒者去其角、傅其翼者兩其足、是所受大者不得取小也。古之所與禄者、不食於力、不動於末、是亦受大者不得取小也。夫已受大、又取小、天不能足、而况人乎。此民之所以囂囂苦不足也。身寵而載高位、家温而食厚禄、因乘富貴之資力、以與民争利於下、民安能如之哉。是故博其産業、蓄其積委、務此而無已、以迫蹵民、民寖以大窮、富者奢侈羨溢、貧者窮急愁苦、而上不救、則民不樂生、民不樂生、尚不避死、安能避罪、此刑罰之所以繁而奸邪不可勝者也。
新字:夫天亦有所分与、与上歯者去其角、傅其翼者両其足、是所受大者不得取小也。古之所与禄者、不食於力、不動於末、是亦受大者不得取小也。夫已受大、又取小、天不能足、而況人乎。此民之所以囂囂苦不足也。身寵而載高位、家温而食厚禄、因乗富貴之資力、以与民争利於下、民安能如之哉。是故博其産業、蓄其積委、務此而無已、以迫蹵民、民寖以大窮、富者奢侈羨溢、貧者窮急愁苦、而上不救、則民不楽生、民不楽生、尚不避死、安能避罪、此刑罰之所以繁而奸邪不可勝者也。
書き下し
夫れ天も亦分かち与うる所有り。上歯を与うる者は其の角を去り、翼を傅くる者は其の足を両にす。是れ受くる所大なる者は小を取るを得ざるなり。古の禄を与えらるる者は、力に食まず、末に動かず。是れ亦受くる所大なる者は小を取るを得ざるなり。夫れ已に大を受け、又小を取れば、天も足らす能わず、而るを況んや人をや。此れ民の囂囂として不足に苦しむ所以なり。身は寵せられて高位に載り、家は温かにして厚禄を食み、因りて富貴の資力に乗じ、以て民と利を下に争えば、民は安くんぞ之に如かん。是の故に其の産業を博くし、其の積委を蓄え、此に務めて已むこと無く、以て民を迫蹵すれば、民寖く以て大いに窮し、富む者は奢侈羨溢し、貧しき者は窮急愁苦す。而るに上救わざれば、則ち民は生を楽しまず。民生を楽しまざれば、尚お死を避けず、安くんぞ能く罪を避けん。此れ刑罰の繁くして奸邪の勝えて可からざる所以なり。
現代語訳
そもそも天にも分け与えるところがあります。上の歯を与えた獣には角を去らせ、翼を添えた鳥には足を二本にしました。これは、大きなものを受けた者は小さなものまで取ってはならない、ということです。古の禄を与えられた者は、力仕事で稼がず、末の業にも手を出しませんでした。これもまた、大を受けた者は小を取ってはならない、ということです。すでに大を受けながらさらに小を取れば、天でも満たすことはできず、まして人はなおさらです。これが民がやかましく不足に苦しむ理由です。身は寵を受けて高位に就き、家は温かく厚い禄を食みながら、富貴の資力に乗じて民と下で利を争えば、民はどうして敵うでしょうか。そこで産業を広げ、蓄えを積み、これに励んで止まず、民を追い詰めれば、民はだんだん窮し、富む者は奢侈で溢れ、貧しい者は窮して愁え苦しみ、上がそれを救わなければ、民は生を楽しまなくなります。民が生を楽しまなければ、死さえ避けないのですから、どうして罪を避けるでしょうか。これが刑罰が繁くなっても奸邪が尽きない理由です。
解説

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『塩鉄論』輕重篇御史曰く、水に猏獺有れば池魚勞し、國に強禦有れば齊民消ゆ。故に茂林の下に豐草無く、大塊の間に美苗無し。夫れ國を理むるの道は、穢を除き豪を鋤く、然る後に百姓均平にして、各々其の宇に安んず。張廷尉は律令を論定し、法を明らかにして以て天下を繩し、奸猾を誅し、幷兼の徒を絕ちて、強は弱を凌がず、眾は寡を暴せず。大夫君は籌策を運らし、國用を建て、天下の鹽・鐵の諸利を籠し、以て富商大賈の官を買い罪を贖うを排し、餘り有るを損じて、足らざるを補い、以て黎民を齊しくす。是を以て兵革は東西に征伐するも、賦斂増さずして用足る。夫れ損益の事は、賢者の睹る所にして、眾人の知る所に非ざるなり。
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『塩鉄論』取下篇賢良曰く、古者、上取るに量有り、自ら養うに度有り、樂歲には盜まず、年饑うれば則ち肆す。民の力を用うること、歲に三日を過ぎず、籍斂は、十一を過ぎず。君篤く愛し、臣力を盡くし、上下交々讓りて、天下平らかなり。『浚く爾の私を發せ』とは、上の下に讓るなり。『遂に我が私に及ぶ』とは、公職を先にするなり。孟子曰く、『未だ仁にして其の親を遺つる者、義にして其の君を後にする者有らざるなり』と。君君たり臣臣たり、何為れぞ其れ禮義無からんや。周の末塗に及びて、德惠塞がりて嗜欲眾く、君は奢侈にして上求むること多く、民は下に困しみ、上公に怠る、是を以て履畝の稅有りて、碩鼠の詩作れるなり。衛の靈公、隆冬に當たりて眾を興して池を穿つ。海春諫めて曰く、『天寒く、百姓凍餒す、願わくは公の役を罷めんことを』と。公曰く、『天寒きかな。我何ぞ寒からざるや』と。人の言に曰く、『安き者は危きを恤む能わず、飽く者は饑うるを食わしむる能わず』と。故に粱肉に余りある者は隱約を言い難く、佚樂に處る者は勤苦を言い難し。夫れ高堂邃宇、廣廈洞房なる者は、專屋狹廬、上漏り下濕る者の窘しみを知らず。馬を系ぐこと百駟、貨財內に充ち、陳きを儲え新しきを納るる者は、旦有りて暮無く、稱貸する者の急を知らず。廣第唐園、良田連比なる者は、運踵の業無く、宅に竄頭する者の役を知らず。原馬山を被い、牛羊谷に滿つる者は、孤豚瘠犢すら無き者の窶しきを知らず。枕を高くして談臥し、叫號無き者は、私責と吏正とに憂え戚しむ者の愁いを知らず。紈を被り韋を躡み、粱を搏り肥を嚙む者は、短褐の寒き、糠の苦きを知らず。房闈の間に從容として、垂拱して案食を持する者は、耒を跖みて躬ら耕す者の勤めを知らず。堅きに乘り良きを驅り、騎を列ねて行を成す者は、檐を負いて步行する者の勞を知らず。匡床旃席、侍御側に滿つる者は、輅を負い船を挽き、高きに登り流れを絕つ者の難きを知らず。輕暖を衣、美裘を被り、溫室に處り、安車に載る者は、邊城に乘り、胡・代に飄い、清風に鄉かう者の危寒を知らず。妻子好合し、子孫之を保つ者は、老母の憔悴、匹婦の悲恨を知らず。耳に五音を聽き、目に弄優を視る者は、流矢を蒙り、敵を方外に距ぐ者の死を知らず。東に向かいて几に伏し、筆を振るいて文を調うるが如き者は、木索の急、棰楚せらるる者の痛みを知らず。旃茵の上に坐し、圖籍の言を易きが若く然りと安んずる者も、亦た步涉する者の難きを知らざるなり。昔、商鞅の秦に任ぜらるるや、人を刑すること菅茅を刈るが若く、師を用うること彈丸の若し。軍に從う者は骨を長城に暴し、戍漕する者は輦車相い望む。生きて往き、死して旋る、彼れ獨り人の子に非ざらんや。故に君子は仁もて以て恕し、義もて以て度り、好惡する所は天下と之を共にし、不仁なる者には施さざる所なり。公劉は貨を好みて、居る者に積有り、行く者に囊有り。太王は色を好みて、內に怨女無く、外に曠夫無し。文王は刑を作りて、國に怨獄無し。武王は師を行りて、士は樂しみて之が為に死し、民は樂しみて之が為に用いらる。斯くの若くんば、則ち民何ぞ苦しみて怨み、何をか求めて譏らんや。