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五行大義 / 第十四論雑配・第六論五事

下不敬。則上無威。夫不敬其君。不從其政。則陰氣勝。陰氣勝。則水象至。故曰。厥罰常雨。雨。則飢寒至。飢寒至。則上下不相信。大臣姧軌。民爲寇盜。民多被刑。則其服妖。服妖者。輕剛漂泆。暴慢之服。以象風氣之化也。言者。於易之道曰兌。兌曰口。言之象。人君言出令行。則從。故易曰。悅以使民。民忘其勞。悅以犯難。民忘其死。是以明君薄斂而厚祿。賞宜從重。罰宜從輕。則順民心。故其教不肅而成。其政不嚴而治。此得民心。民心得。則衆歸之。衆歸之。則民死沒且不忘之。況乎從其令也。若君失衆心。政令不從。亢陽自消。群陰不附。而下畏君之重刑。則陽氣勝。陽氣勝則旱。故曰。厥罰常暘。常暘。則飢貧。飢貧。不足。不足。不敢正言。則先發於歌謠之口也。氣逆則惡言至。蟲蝗生。皆口事也。視者。南方目之象。視曰明。明以知人爲本。於易爲離。離爲火。爲目。夫視不明。微弱不知所信。必長伺黨仇親同類。如此。賢者不進。賢者不進。則不肖者不退。不肖者不退。則犯上者不誅。無罪者橫罰。百職廢壞。庶事滯塞。教政舒緩。故曰。厥罰常燠。燠則冬氣泄。冬氣泄。則不塞。春夏氣錯。疾疫起矣。

新字:下不敬。則上無威。夫不敬其君。不従其政。則陰気勝。陰気勝。則水象至。故曰。厥罰常雨。雨。則飢寒至。飢寒至。則上下不相信。大臣姧軌。民為寇盗。民多被刑。則其服妖。服妖者。軽剛漂泆。暴慢之服。以象風気之化也。言者。於易之道曰兌。兌曰口。言之象。人君言出令行。則従。故易曰。悦以使民。民忘其労。悦以犯難。民忘其死。是以明君薄斂而厚禄。賞宜従重。罰宜従軽。則順民心。故其教不粛而成。其政不厳而治。此得民心。民心得。則衆帰之。衆帰之。則民死没且不忘之。況乎従其令也。若君失衆心。政令不従。亢陽自消。群陰不附。而下畏君之重刑。則陽気勝。陽気勝則旱。故曰。厥罰常暘。常暘。則飢貧。飢貧。不足。不足。不敢正言。則先発於歌謡之口也。気逆則悪言至。虫蝗生。皆口事也。視者。南方目之象。視曰明。明以知人為本。於易為離。離為火。為目。夫視不明。微弱不知所信。必長伺党仇親同類。如此。賢者不進。賢者不進。則不肖者不退。不肖者不退。則犯上者不誅。無罪者横罰。百職廃壊。庶事滞塞。教政舒緩。故曰。厥罰常燠。燠則冬気泄。冬気泄。則不塞。春夏気錯。疾疫起矣。

書き下し

下敬せざれば、則ち上に威無し。夫れその君を敬せず、その政に従わざれば、則ち陰気勝つ。陰気勝てば、則ち水の象至る。故に曰く、厥(そ)の罰は常雨、と。雨ふれば、則ち飢寒至る。飢寒至れば、則ち上下相信ぜず、大臣は姧軌(かんき)し、民は寇盗と為る。民多く刑せらるれば、則ちその服妖あり。服妖とは、軽剛漂泆(ひょういつ)、暴慢の服なり。以て風気の化に象るなり。言は、易の道に於いて兌と曰う。兌は口と曰う、言の象なり。人君言出でて令行わるれば、則ち従う。故に易に曰く、悦びて以て民を使えば、民その労を忘る。悦びて以て難を犯せば、民その死を忘る、と。是を以て明君は斂(おさめ)を薄くして禄を厚くし、賞は宜しく重きに従い、罰は宜しく軽きに従うべし。則ち民心に順う。故にその教えは粛(きび)しからずして成り、その政は厳ならずして治まる。此れ民心を得るなり。民心を得れば、則ち衆これに帰す。衆これに帰すれば、則ち民死没すと雖も且つこれを忘れず。況んやその令に従うをや。若し君衆心を失い、政令従われず、亢陽(こうよう)自ら消し、群陰附かずして、下君の重刑を畏るれば、則ち陽気勝つ。陽気勝てば則ち旱(ひでり)す。故に曰く、厥の罰は常暘(じょうよう)、と。常暘なれば、則ち飢貧す。飢貧すれば、足らず。足らざれば、敢えて正言せず、則ち先ず歌謡の口に発するなり。気逆すれば則ち悪言至り、蟲蝗生ず。皆口の事なり。視は、南方目の象なり。視は明と曰う。明は人を知るを以て本と為す。易に於いては離たり、離は火たり、目たり。夫れ視明らかならざれば、微弱にして信ずる所を知らず、必ず長く党を伺い、仇を同類に親しむ。此の如くなれば、賢者進まず。賢者進まざれば、則ち不肖者退かず。不肖者退かざれば、則ち上を犯す者誅せられず、罪無き者横(よこしま)に罰せられ、百職廃壊し、庶事滞塞し、教政舒緩す。故に曰く、厥の罰は常燠(じょういく)、と。燠なれば則ち冬気泄る。冬気泄るれば、則ち塞がらず、春夏の気錯(みだ)れ、疾疫起こる。

現代語訳

下の者が敬わなければ、上には威厳がない。そもそも民がその君主を敬わず、その政治に従わなければ、陰の気が勝つ。陰の気が勝てば、水のしるしがやって来る。だから「その罰は長雨である」という。雨が続けば飢えと寒さがやって来る。飢えと寒さがやって来れば、上と下が互いに信じ合わなくなり、大臣は悪事をはたらき、民は盗賊となる。民の多くが刑罰を受けるようになると、服妖(服装に現れる怪異)が起こる。服妖とは、軽薄で浮ついた、乱暴で傲慢な服装のことである。これは風の気の変化にかたどったものである。言は、『易』の道では兌(だ)の卦という。兌は口であり、言葉のかたちである。人君が言葉を発して命令が行われれば、民は従う。だから『易』に、喜ばせて民を使えば民はその苦労を忘れ、喜ばせて困難に立ち向かわせれば民はその死を忘れる、とある。そこで賢明な君主は税の取り立てを軽くして俸禄を厚くし、賞はなるべく重くし、罰はなるべく軽くする。そうすれば民の心に従うことになる。だからその教えは厳しくしなくても成りたち、その政治は厳格にしなくても治まる。これが民の心を得るということである。民の心を得れば、人々はこれに帰服する。人々が帰服すれば、民は死んだ後でさえ君主を忘れない。まして命令に従うのは言うまでもない。もし君主が人々の心を失い、政令が従われず、強すぎる陽がおのずと消え、多くの陰がつき従わず、下の者がただ君主の重い刑罰を恐れるだけであれば、陽の気が勝つ。陽の気が勝てば日照りになる。だから「その罰は長い晴天である」という。晴天が続けば飢えて貧しくなる。飢えて貧しくなれば物が足りなくなる。足りなくなっても、あえてまっすぐに物を言わず、まず歌謡の口から不満が現れる。気が逆らえば悪い言葉が出回り、いなごが湧く。これはみな口にまつわる事である。視は、南方の目のかたちである。視は明らかであることをいう。明らかさは人を見抜くことを根本とする。『易』では離(り)の卦であり、離は火であり、目である。そもそも見ることが明らかでなければ、弱々しくて誰を信じるべきかがわからず、必ずいつまでも徒党をうかがい、仇である者を同類として親しむ。こうなれば賢者は登用されない。賢者が登用されなければ、愚か者は退けられない。愚か者が退けられなければ、上に逆らう者は罰せられず、罪のない者がむやみに罰せられ、あらゆる役職は廃れ壊れ、多くの事は滞りふさがり、教化と政治はゆるんでしまう。だから「その罰は長い暖かさである」という。暖かさが続けば冬の気が漏れ出る。冬の気が漏れ出れば、ふさがるべきものがふさがらず、春と夏の気が乱れて、疫病が起こる。

解説

五事のうち貌の続きと、言・視について、君主の振る舞いが失われたとき天候の異変となって現れるという考えを述べる段である。これは『漢書』五行志に詳しく見える前漢の災異説に基づくもので、貌が恭しくなければ長雨、言が民心に従わなければ日照り、視が明らかでなければ暖冬という具合に、五事の失敗と天候の罰が対応づけられている。言を『易』の兌の卦に当てて、喜ばせて民を使えば民は労苦も死も忘れるという『易』の言葉を引き、税を軽く、賞を重く、罰を軽くすれば民心を得られると説く。また不満がまっすぐな言葉ではなく流行り歌となって現れるという指摘は、世の空気を歌謡から読み取る「童謡」の予言の考え方に通じる。視については、人を見抜く目がなければ賢者が退けられ、愚か者がのさばって政治が滞ると述べる。天候まで君主の責任とする発想は今では受け入れにくいが、上に立つ者の言葉と人を見る目が組織の空気を決めるという指摘は、今もそのまま通用する。

この章句が説くこと

五行大義五事災異洪範民心

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