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五行大義 / 第十四論雑配・第四論配蔵府

河圖云。仁慈惠施者。肝之精。悲哀過度。則傷肝。肝傷。則令目視芒芒。禮操列真。心之精。喜怒激切。傷心。心傷。則疾衂吐逆。和厚篤信者。脾之精。縱逸貪嗜。則傷脾。脾傷。則畜積不化。致否結之疾。義惠剛斷。肺之精。患憂憤勃。則傷肺。肺傷。則致欬逆失音。智辨謀略。腎之精。勞欲憤滿。則傷腎。腎傷。則喪精損命。此豈直違五常而損年命。亦破六情以亡國家也。至如桀。紂兩帝。竝貪縱而喪其邦。梁。竇二臣。亦皆奢逸而傾其家。雖彭子以色延命。齊王因怒袪病。如此異轍。皆有調節之宜。節之則四大獲安。縱之則五藏成患。素問云。肝者。爲將軍之官。謀慮出焉。心者。爲君主之官。神明出焉。脾者。倉廩之官。五味出焉。肺者。相傅之官。治節出焉。腎者。作強之官。伎巧出焉。肝者。爲將軍之官。謀慮出者。木性仁。仁者必能深思遠慮。恒欲利安萬物。將軍爲行兵之主。必以謀慮爲先。故兵書曰。兵以仁舉。則無不從。得之以仁分。則無不從悅。又曰。將無謀則士卒憂。將無慮則士卒去。故肝爲將軍。出謀慮也。

新字:河図云。仁慈恵施者。肝之精。悲哀過度。則傷肝。肝傷。則令目視芒芒。礼操列真。心之精。喜怒激切。傷心。心傷。則疾衂吐逆。和厚篤信者。脾之精。縦逸貪嗜。則傷脾。脾傷。則畜積不化。致否結之疾。義恵剛断。肺之精。患憂憤勃。則傷肺。肺傷。則致欬逆失音。智弁謀略。腎之精。労欲憤満。則傷腎。腎傷。則喪精損命。此豈直違五常而損年命。亦破六情以亡国家也。至如桀。紂両帝。並貪縦而喪其邦。梁。竇二臣。亦皆奢逸而傾其家。雖彭子以色延命。斉王因怒袪病。如此異轍。皆有調節之宜。節之則四大獲安。縦之則五蔵成患。素問云。肝者。為将軍之官。謀慮出焉。心者。為君主之官。神明出焉。脾者。倉廩之官。五味出焉。肺者。相傅之官。治節出焉。腎者。作強之官。伎巧出焉。肝者。為将軍之官。謀慮出者。木性仁。仁者必能深思遠慮。恒欲利安万物。将軍為行兵之主。必以謀慮為先。故兵書曰。兵以仁舉。則無不従。得之以仁分。則無不従悦。又曰。将無謀則士卒憂。将無慮則士卒去。故肝為将軍。出謀慮也。

書き下し

『河図』に云う、仁慈恵施する者は、肝の精なり。悲哀過度なれば、則ち肝を傷る。肝傷るれば、則ち目をして視ること芒芒(ぼうぼう)たらしむ。礼操列真なるは、心の精なり。喜怒激切なれば、心を傷る。心傷るれば、則ち衄(じく)を疾(や)み吐逆す。和厚篤信なる者は、脾の精なり。縦逸貪嗜なれば、則ち脾を傷る。脾傷るれば、則ち畜積化せず、否結(ひけつ)の疾を致す。義恵剛断なるは、肺の精なり。患憂憤勃なれば、則ち肺を傷る。肺傷るれば、則ち欬逆(がいぎゃく)失音を致す。智弁謀略なるは、腎の精なり。労欲憤満なれば、則ち腎を傷る。腎傷るれば、則ち精を喪い命を損なう、と。此れ豈に直(ただ)に五常に違いて年命を損なうのみならんや、亦六情を破りて以て国家を亡ぼすなり。桀・紂の両帝の如きに至りては、並びに貪縦にしてその邦を喪い、梁・竇の二臣も、亦皆奢逸にしてその家を傾く。彭子は色を以て命を延べ、斉王は怒りに因りて病を袪(はら)うと雖も、此の如きは轍を異にするも、皆調節の宜しき有り。これを節すれば則ち四大安きを獲、これを縦(ほしいまま)にすれば則ち五蔵患いを成す。『素問』に云う、肝は将軍の官たり、謀慮出づ。心は君主の官たり、神明出づ。脾は倉廩の官たり、五味出づ。肺は相傅(しょうふ)の官たり、治節出づ。腎は作強の官たり、伎巧出づ、と。肝は将軍の官たり、謀慮出づとは、木の性は仁なり。仁者は必ず能く深く思い遠く慮り、恒に万物を利安せんと欲す。将軍は兵を行うの主たり、必ず謀慮を以て先と為す。故に兵書に曰く、兵は仁を以て挙ぐれば、則ち従わざる無し。これを得るに仁を以て分かてば、則ち従い悦ばざる無し、と。又曰く、将に謀無ければ則ち士卒憂え、将に慮無ければ則ち士卒去る、と。故に肝は将軍たり、謀慮を出だすなり。

現代語訳

『河図』にはこうある。慈しみ深く恵みを施すのは肝の精である。悲しみが度を越せば肝を傷める。肝が傷めば、目の見え方がぼんやりとかすむ。礼を守り操をまっすぐに保つのは心の精である。喜びや怒りが激しすぎれば心を傷める。心が傷めば、鼻血が出たり吐いたりする病になる。穏やかで手厚く、誠実であるのは脾の精である。気ままにふるまい貪って好きなものに溺れれば脾を傷める。脾が傷めば、たまったものが消化されず、つかえふさがる病になる。義と恵みを備え、剛く決断するのは肺の精である。心配や憂いや憤りがこみ上げれば肺を傷める。肺が傷めば、咳き込んで声が出なくなる。知恵があって弁が立ち、はかりごとに優れるのは腎の精である。疲れや欲や鬱憤がたまれば腎を傷める。腎が傷めば、精を失い命を縮める、と。これはどうして五常に背いて寿命を損なうというだけのことであろうか。六つの感情を破って国家まで滅ぼすのである。桀王と紂王の二人の帝王に至っては、どちらも欲望のままにふるまって国を失い、梁冀と竇憲の二人の臣下(いずれも後漢の外戚の権臣)もまた、ともにおごりと放縦によって家を傾けた。彭祖(長寿で知られた伝説上の人物)は色によって命を延ばし、斉王は怒らされたことによって病を払ったというが、このように道筋は違っていても、どれも程よく調えることが大事だという点では同じである。節度を守れば体のすべてが安らかになり、ほしいままにすれば五臓が病む。『素問』にはこうある。肝は将軍の官であり、はかりごとと思慮はここから出る。心は君主の官であり、神明(精神の明るい働き)はここから出る。脾は穀物倉の官であり、五味はここから出る。肺は宰相の官であり、治め調える働きはここから出る。腎は力仕事の官であり、技巧はここから出る、と。肝が将軍の官であり、はかりごとと思慮がそこから出るというのは、木の性は仁だからである。仁ある者は必ず深く思い遠くまで考えることができ、常に万物を利し安んじようと願う。将軍は兵を動かす主であり、必ずはかりごとと思慮を第一とする。だから兵書には、兵を仁によって起こせば従わない者はなく、手に入れたものを仁によって分ければ喜んで従わない者はない、とある。また、将にはかりごとがなければ兵士は不安になり、将に思慮がなければ兵士は去っていく、ともある。だから肝は将軍であり、はかりごとと思慮を生み出すのである。

解説

五臓と心の働き・感情の関係を説き、さらに五臓を国家の官職になぞらえる段である。『河図』は、仁・礼・信・義・智という五臓それぞれの徳と、それを損なう感情の行き過ぎ、そして傷んだときの症状を対にして並べる。悲しみすぎれば肝を、喜怒が激しければ心を傷めるという考えは、感情の偏りが体を病ませるという東洋医学の基本の見方である。蕭吉はこれを個人の養生にとどめず、欲にふけって国を滅ぼした桀・紂や、驕りで家を傾けた後漢の外戚の梁冀・竇憲を例に、国家の興亡にまで広げている。後半は『素問』霊蘭秘典論の、肝を将軍、心を君主、肺を宰相とする有名な一節で、からだを一つの国の役所のように見立てたものである。肝が将軍とされるのを、仁ある者こそ深く謀るという理由で説明し、兵書の言葉まで引くのは、医学と兵学と政治を一つの理で貫こうとするこの書の性格をよく表している。感情も欲も消すのではなく「節する」ことが大切だという結論は、今の心身の健康にもそのまま通じる。

この章句が説くこと

五行大義五臓感情素問節度

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