言志四録 / 南洲手抄
果斷、有自義來者。有自智來者。有自勇來者。有并義與智而來者、上也。徒勇而已者殆矣。
新字:果断、有自義来者。有自智来者。有自勇来者。有并義与智而来者、上也。徒勇而已者殆矣。
書き下し
果断は、義より来るもの有り。智より来るもの有り。勇より来るもの有り。義と智とを併せて来るもの有り、上なり。徒に勇のみなるは殆し。
現代語訳
決断力には、義(正しさの確信)から来るもの、智(見通しの明晰さ)から来るもの、勇(勇気)から来るものがある。義と智を兼ね備えて生まれる決断が最上である。ただ勇気だけの決断は危うい。
解説
決断力(果断)を、その源によって格付けした一条です。同じ「決断が早い」でも、正しさの確信(義)から来るもの、状況を見通す明晰さ(智)から来るもの、単なる勇気(勇)から来るものがある。一斎は、義と智を兼ね備えた決断を最上とし、勇気だけの決断は危ういと戒めます。無謀と果断は紙一重で、それを分けるのは正しさへの確信と冷静な見通しなのです。「決断が速い=優れたリーダー」と評価されがちな現代に、速さそのものより、その決断が何に支えられているかを問う視点を与えます。決断の質を見極める、実践的な一条です。
この章句が説くこと
決断力義智勇果断無謀
関連する章句
-
尚書・周官惟れ克く果断すれば、乃ち後艱罔し。
-
論語・雍也篇季康子問う、「仲由は政に従わしむ可きか。」子曰く、「由や果、政に従うに於いて何か有らん。」曰く、「賜は政に従わしむ可きか。」曰く、「賜や達、政に従うに於いて何か有らん。」曰く、「求は政に従わしむ可きか。」曰く、「求や芸、政に従うに於いて何か有らん。」
-
『講孟余話』萬章下 第四章余古今を歴視するに、姦権威福を縦にし、悖逆を逞しうする者は、大抵其の初めは恭謙にして士に下り、敏遜学を好み、頗る人望名誉ある者なり。漢の王莽、明の厳嵩が如き、皆初めより縦にし逞しうするに非ず。故に賢士大夫皆好みて是に交はる。其の已に縦にし已に逞しうするに至りて、遽かに交を絶つこと難く、揚雄が新を美し、唐順之が厳嵩を称する如きこと多し。明智の士は其の初めに当たりて已に其の人を知り、敢へて交通せず。果断の士は其の罪悪顕るるに当たりて直論面折して是を絶つ。炎に就き赫を羨み、奔競躁進、僥倖を計り冒進を冀ふ如きは、更に論ずるに足らず。斯の二つを失ふ時は、必ず畢生の節操を誤るなり。切問近思の人、斯の境に身を体し、胸に手を措きて工夫すべし。甚だ処し難き所なり。然れども疎心浮気にては其の真に処し難きを知ること能はず。真に処し難きを知る者にして、初めて権勢の汚染を免るることを得るに庶幾からんか。
-
言志四録・言志晩録 別存 第三十一条 明決爽快なるべし公曰く、「男児事を做すには、宜しく明決爽快なるべし。趑趄依違を為すこと勿れ」と。
-
『碧巌録』第五則垂示に云く、大凡そ宗教を扶竪するには、須らく是れ英霊底の漢、人を殺して眼を眨せざる底の手脚有つて、方に立地に成仏すべし。所以に照用同時、巻舒斉唱、理事不二、権実並行す。一著を放過して、第二義門を建立す。直下に葛藤を截断せば、後学初機湊泊を為し難し。昨日恁麼なるは、事已むことを獲ず。今日又恁麼なるは、罪過弥天。若し是れ明眼の漢ならば、一点も他を謾ずることを得ず。其れ或いは未だ然らずんば、虎口裏に身を横たへて、喪身失命することを免れじ。試みに挙し看ん。
-
『呻吟語』内篇・應務・道に直なるに當たらざる有り聖賢の天下の事に處するは、委曲紆徐にして、輕々しく一己の情に徇ひて、以て天下の欲に違ひ、以て天下の防を破らず。是の故に道に當に直なるべからざる有り、事に必ずしも果ならざる者有り。此の類是れなり。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る