言志四録 / 言志晩録 第百六十条 小心翼翼と天網恢恢
爲長官者。勿忘小心翼翼。爲吏胥者。勿忽天網恢恢。
新字:為長官者。勿忘小心翼翼。為吏胥者。勿忽天網恢恢。
書き下し
長官たる者は、小心翼翼を忘るること勿れ。吏胥たる者は、天網恢恢を忽せにすること勿れ。
現代語訳
長官である者は、細心に慎み深くあることを忘れてはならない。下役人である者は、「天の網は広大で目が粗いようだが、悪を漏らすことはない」ということを軽んじてはならない。
解説
上に立つ者と下で働く者、それぞれへの戒めを古典の句で示した一条です。長官には『詩経』大雅の「小心翼翼」、つまり細やかに慎み深い心を忘れるなと言います。権限が大きいほど、大まかになりがちだからです。下役には『老子』の「天網恢恢、疎にして漏らさず」を忘れるなと言います。目が届かないと思って不正に手を染めても、いずれは露見するということです。上の者は油断によって、下の者は誘惑によって誤りやすい。その弱点に応じて戒めを使い分けているところに、長く役所の内側を見てきた一斎の観察が表れています。自分の立場ならではの落とし穴は何か、を考えさせる一条です。
この章句が説くこと
慎み戒慎不正の戒め立場天網
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