言志四録 / 言志晩録 第百五十八条 量と才と力を揆る
人做事。須就其事。自揆我量與才與力之可及。又把事之緩急。與齡之老壯相比照。而後做起。不然。妄意下手。殆不免狼狽。
新字:人做事。須就其事。自揆我量与才与力之可及。又把事之緩急。与齢之老壮相比照。而後做起。不然。妄意下手。殆不免狼狽。
書き下し
人事を做すには、須らく其の事に就きて、自ら我が量と才と力との及ぶべきを揆り、又事の緩急と、齢の老壮とを把りて相比照し、而る後に做し起こすべし。然らずして、妄意に手を下さば、殆ど狼狽を免れず。
現代語訳
人が事を行うときは、その事に即して、自分の度量と才能と力がどこまで及ぶかを自分で推し量り、また事の急ぐか急がないかと、自分の年齢が老いているか若いかとを照らし合わせたうえで、取りかかるべきである。そうしないで、むやみに手を下すならば、ほとんど行き詰まって慌てふためくことを免れない。
解説
事を始める前の自己点検を説いた一条です。一斎は三つの自己評価、すなわち度量と才能と体力が、その事に足りるかをまず量れと言います。さらに事の緩急と自分の年齢を照らし合わせよと付け加えます。急を要する大事を老いてから引き受けても力が続かず、若さに任せて気長な事業に手を出すのも危うい、ということでしょう。晩録は一斎が六十代後半から七十代にかけて書いた部分で、年齢と仕事の釣り合いを自分のこととして考えていたことがうかがえます。新しい役割や事業を引き受けるとき、意欲だけで判断せず、自分の器量と時間の見通しを冷静に見積もっているか。引き受ける前の一呼吸を促す一条です。
この章句が説くこと
自己認識力量緩急老い見通し
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