言志四録 / 南洲手抄
以天而得者固。以人而得者脆。
書き下し
天を以て得たるものは固し。人を以て得たるものは脆し。
現代語訳
天(道理・実力)によって得たものは堅固である。人(コネや引き立て)によって得たものは脆い。
解説
得たものの「堅さ」を、その由来から見分けた一条です。地道な努力や実力、道理にかなった正当な道で得たもの(天によって得たもの)は、揺るがず長続きする。一方、人のコネや引き立て、時の勢いで得たもの(人によって得たもの)は、その人が去れば崩れる脆いものだ、というのです。地位も評判も財も、どうやって手に入れたかで耐久性が決まる。手っ取り早い近道に頼りたくなる私たちに、本物の土台は実力と正道にしかないと戒めます。短いながら、キャリアや成功の質を鋭く問う一条です。
この章句が説くこと
天と人実力正道持続
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『士道心得書』・常は正道・變は詭道正氣を以て用とす。然るに常變との用差別有り。常の用は正道を以てし、變の用は詭道を以てす。然るに人々士の道と用とを辨へず、用ゐるに亦常變不正、故に混雜して、詭道を以て全くするを、士の道と心得違ふ事、是れ本を明かにせざるの誤りなり。孫子曰く、兵は詭道なりと。云ふ處の道は、武道の道に有らず、如何ぞ此の道に過り有るべけんや。故に孫子兵者と云へり。戰に臨みては詭道なりと云ふ事なり。戰は變なり。既に合戰に至りて、勝負に臨んでは、殊勝らしき正道仁義、仁者に敵無しなど云ふやうなる事にて、勝負の埒明く事に有らず。王道仁義全き論にては、合戰は有るまじ。唯だ聖人の敵へにて治平す。然れ共就中末世に及び、人の心直ならず、君臣父子兄弟朋友の道皆變ぜずといふ事なし、變なる時は、兵道にあらざれば、何ぞ是を治めん哉。聖人の道を守り、天下治まる時は、詭道の變、兵家者流の舌頭を動かすに及ばず。又仁者に敵無しといふは、大王の德の如し。先づ其の身仁者に成りての上の事なり。今の世に唯だ仁者といふ理有るのみにて、實に仁者はなし。
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