言志四録 / 言志後録 第九十三条 寝食を慎むは孝なり
能愼寢食。孝也。
新字:能慎寝食。孝也。
書き下し
能く寝食を慎むは、孝なり。
現代語訳
寝ることと食べることを慎むことができるのは、それ自体が孝行である。
解説
『孝経』に「身体髪膚、之を父母に受く、敢へて毀傷せざるは、孝の始めなり」とあるように、儒学では親から受けた体を損なわないことが孝の出発点とされます。一斎はそれを最も日常的な寝食の慎みにまで引き下ろしました。夜更かしや暴飲暴食で体を壊すことは、親を悲しませ、親から受けたものを粗末にすることになるからです。前条の夜具の話とも続き、ありふれた生活の節度の中に徳を見る一斎らしい視点です。一斎自身、鍼や養生に気を配り八十八歳まで生きました。忙しさを理由に睡眠や食事を削ることが美徳のように語られがちな職場でも、自分の体を大切にすることは、家族やともに働く人への責任でもあると考えてみる余地があります。
この章句が説くこと
孝養生寝食節度健康
関連する章句
-
言志四録・言志晩録 第二百七十六条 老いて養ふを知らず貴介の人多く婢妾を畜ふ。耆年を踰えて児を得る者、往往にして之有り。摂養の宜しきに非ず。老いて養ふを知らざるは、之を不慈不孝に比す。
-
『春秋左氏伝』成公二年 我が疆、我が理蕭同叔子は他に非ず、寡君の母なり。若し匹敵を以てせば、則ち亦た晉君の母なり。吾子大命を諸侯に布きて、曰く、必ず其の母を質として以て信と為さんと。其れ王命を若何せん。且つ是れ不孝を以て令するなり。詩に曰く、『孝子匱しからず、永く爾が類に錫ふ』と。若し不孝を以て諸侯に令せば、其れ乃ち德類に非ざること無からんや。先王天下を疆理し、土の宜しきを物して其の利を布く。故に詩に曰く、『我が疆我が理、其の畝を南東にす』と。今吾子諸侯を疆理して、曰く、盡く其の畝を東にせよと。唯だ吾子の戎車是れ利するのみにして、土の宜しきを顧みず、其れ乃ち先王の命に非ざること無からんや。先王に反くは則ち不義なり、何を以てか盟主と為らん。其れ晉實に闕くる有り。四王の王たるや、德を樹てて同欲を濟す。五伯の霸たるや、勤めて之を撫し、以て王命に役す。今吾子諸侯を合せんことを求めて、以て無疆の欲を逞しくす。詩に曰く、『政を布くこと優優たり、百祿是れ遒まる』と。子實に優ならずして、百祿を棄つ。
-
論語・為政篇子夏孝を問う。子曰く、「色難し。事有れば弟子其の労に服し、酒食有れば先生に饌(まかな)う。曾て是を以て孝と為さんや。」
-
論語・為政篇孟懿子孝を問う。子曰く、「違(たが)うこと無かれ。」樊遅御(ぎょ)す。子之に告げて曰く、「孟孫我に孝を問う。我対えて曰く、違(たが)うこと無かれと。」樊遅が曰く、「何の謂(いい)ぞや。」子曰く、「生きては之に事(つか)うるに礼を以てし、死しては之を葬るに礼を以てし、之を祭るに礼を以てす。」
-
論語・為政篇孟武伯孝を問う。子曰く、「父母は唯其の疾(やまい)を之憂う。」
-
論語・学而篇子曰く、「父在せば其の志を観、父没すれば其の行いを観る。三年父の道を改むること無くんば、孝と謂う可し。」
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る