言志四録 / 南洲手抄
遠方試歩者、往往舍正路、趨捷徑、或繆入林莽、可嗤也。人事多類此。特記之。
新字:遠方試歩者、往往舎正路、趨捷径、或繆入林莽、可嗤也。人事多類此。特記之。
書き下し
遠方に歩を試むる者、往往にして正路を舍て、捷径に趨り、或は繆つて林莽に入る、嗤ふ可きなり。人事多く此に類す。特に之を記す。
現代語訳
遠くへ歩いて行こうとする者は、往々にして正しい本道を捨て、近道に走り、あるいは道を誤って草深い林の中に迷い込む。笑うべきことである。人の事も、多くはこれに似ている。だから特に書き留めておく。
解説
「近道」の誘惑の愚かさを、旅の比喩で戒めた一条です。遠くまで行こうとする者ほど、つい正しい本道を捨てて近道に走り、あげく道を誤って草深い林に迷い込む——それは笑うべきことだが、人の生き方も多くはこれに似ている、と一斎はわざわざ書き留めます。目的地が遠いときこそ、手っ取り早い近道が魅力的に見える。しかし近道は、しばしば遠回りや迷いを招きます。四十五番「天によって得たものは固く、人によって得たものは脆い」とも通じる、着実さの勧めです。効率や時短が求められる現代に、急がば回れ、正道こそ最短だと諭す一条です。
この章句が説くこと
近道正道急がば回れ着実さ
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