言志四録 / 南洲手抄
動於不得已之勢、則動而不括。履於不可枉之途、則履而不危。
書き下し
已むことを得ざるの勢に動けば、則ち動いて括せず。枉ぐ可らざるの途を履めば、則ち履んで危からず。
現代語訳
やむにやまれぬ勢いに乗って動けば、動いても行き詰まらない。曲げてはならない正しい道を踏んでいけば、進んでも危うくならない。
解説
前条の「至誠」を、行動の指針へと展開した一条です。私欲や打算で無理に動けば、どこかで行き詰まる。しかし内から満ちた必然の勢いに従えば、動きは滞りません。同じく、都合で道を曲げれば足元が危うくなりますが、曲げてはならない正道を踏めば、かえって危険がない。要は、動機が誠であり、道が正しければ、行動は自然に力を持つということです。決断を前に「これは私欲か、やむにやまれぬ必然か」を自らに問う、確かな基準を与えてくれます。
この章句が説くこと
順理正道決断私欲
関連する章句
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『神皇正統記』巻二 第十六代 応神天皇此故に古の聖人、「道は須臾もはなるべからず。はなるべきは道にあらず。」と云けり。但其の末を学びて源を明めざれば、ことにのぞみて覚えざる過あり。其源と云は、心に一物をたくはへざるを云ふ。しかも虚無の中に留るべからず。天地あり、君臣あり。善悪の報影響の如し。己が欲をすて、人を利するを先として、境々に対すること、鏡の物を照すが如く、明々として迷はざらんを、まことの正道と云べきにや。代くだれりとて自ら苟むべからず。天地の始は今日を始とする理なり。加之、君も臣も神をさること遠からず。常に冥の知見をかへりみ、神の本誓をさとりて、正に居せんことを心ざし、邪なからんことを思給べし。
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孟子・滕文公章句下穴隙を鑽るの類と与にするなり。」
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『士道心得書』・常は正道・變は詭道正氣を以て用とす。然るに常變との用差別有り。常の用は正道を以てし、變の用は詭道を以てす。然るに人々士の道と用とを辨へず、用ゐるに亦常變不正、故に混雜して、詭道を以て全くするを、士の道と心得違ふ事、是れ本を明かにせざるの誤りなり。孫子曰く、兵は詭道なりと。云ふ處の道は、武道の道に有らず、如何ぞ此の道に過り有るべけんや。故に孫子兵者と云へり。戰に臨みては詭道なりと云ふ事なり。戰は變なり。既に合戰に至りて、勝負に臨んでは、殊勝らしき正道仁義、仁者に敵無しなど云ふやうなる事にて、勝負の埒明く事に有らず。王道仁義全き論にては、合戰は有るまじ。唯だ聖人の敵へにて治平す。然れ共就中末世に及び、人の心直ならず、君臣父子兄弟朋友の道皆變ぜずといふ事なし、變なる時は、兵道にあらざれば、何ぞ是を治めん哉。聖人の道を守り、天下治まる時は、詭道の變、兵家者流の舌頭を動かすに及ばず。又仁者に敵無しといふは、大王の德の如し。先づ其の身仁者に成りての上の事なり。今の世に唯だ仁者といふ理有るのみにて、實に仁者はなし。
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言志四録・南洲手抄遠方に歩を試むる者、往往にして正路を舍て、捷径に趨り、或は繆つて林莽に入る、嗤ふ可きなり。人事多く此に類す。特に之を記す。
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孟子・滕文公章句下周霄問ひて曰く、「古の君子は仕へしか。」孟子曰く、「仕へたり。伝に曰く、『孔子は三月君無ければ、則ち皇皇如たり。疆を出づるに必ず質(し)を載す。』と。公明儀曰く、『古の人は三月君無ければ則ち弔す。』と。」「三月君無ければ則ち弔すとは、以(はなは)だ急ならずや。」曰く、「士の位を失ふや、猶ほ諸侯の国家を失ふがごときなり。礼に曰く、『諸侯は耕助して、以て粢盛(しせい)を供す。夫人は蚕繅(さんそう)して、以て衣服を為る。犠牲成らず、粢盛潔からず、衣服備はらざれば、敢へて以て祭らず。惟だ士も田無ければ、則ち亦た祭らず。』と。牲殺・器皿・衣服備はらず、敢へて以て祭らざれば、則ち敢へて以て宴せず、亦た弔するに足らざらんや。」「疆を出づるに必ず質を載すとは、何ぞや。」曰く、「士の仕ふるや、猶ほ農夫の耕すがごときなり。農夫豈に疆を出づるが為に其の耒耜(らいし)を舎てんや。」曰く、「晋国も亦た仕国なり。未だ嘗て仕ふること此くの如く其れ急なるを聞かず。仕ふること此くの如く其れ急なるに、君子の仕ふるを難しとするは、何ぞや。」曰く、「丈夫生まれては之が為に室有らんことを願ひ、女子生まれては之が為に家有らんことを願ふ。父母の心は、人皆之有り。父母の命、媒妁の言を待たずして、穴隙を鑽りて相窺ひ、墻を逾えて相従へば、則ち父母・国人皆之を賤しむ。古の人は未だ嘗て仕ふるを欲せずんばあらざるなり、又其の道に由らざるを悪む。其の道に由らずして往く者は、

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