言志四録 / 言志耋録 第三百三十条 理以て気を率ゐる
老人少决。以神氣乏也。唯事理精明。則理以率氣。無此弊耳。
新字:老人少決。以神気乏也。唯事理精明。則理以率気。無此弊耳。
書き下し
老人の決少なきは、神気の乏しきを以てなり。唯だ事理精明なれば、則ち理以て気を率ゐて、此の弊無きのみ。
現代語訳
老人に決断が少ないのは、精神の気力が乏しくなっているからである。ただ、物事の道理がはっきりとわかっていれば、道理が気を率いるので、この弊害はない。
解説
一一六五条で老人は決断のないことを患えよと述べたのを受け、その原因と対策を示した一条です。決断できないのは神気、すなわち精神の気力が乏しいからだとし、しかし事の道理が明らかであれば、理が気を率いて決断できると言います。理と気は朱子学の基本概念で、気の衰えを理の明らかさで補うという考えは、朱子学者としての一斎らしい処方です。気力に頼る決断は若さとともに失われますが、筋道の見えた決断は年齢に左右されません。判断に迷うとき、気力を奮い立たせるより、まず事の筋道を明らかにすることが決断を助けるという点で、実務に近い示唆を持つ条です。
この章句が説くこと
決断理気老い事理
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