言志四録 / 言志耋録 第三百条 老人は気急なり
老人氣急。事好速成。不能自重。不能含畜。又妄信人言。不能察其虛實。可不警乎。
新字:老人気急。事好速成。不能自重。不能含畜。又妄信人言。不能察其虚実。可不警乎。
書き下し
老人は気急なり。事、速成を好む。自重すること能はず。含畜すること能はず。又妄りに人の言を信じ、其の虚実を察すること能はず。警めざるべけんや。
現代語訳
老人は気が短い。物事を早く仕上げたがる。自分を重んじて慎重に構えることができず、胸にしまって蓄えておくこともできない。また人の言うことをむやみに信じて、その真偽を見きわめることができない。戒めずにいられようか。
解説
『言志耋録』の終わり近くには、八十歳を迎えた一斎が老いそのものを見つめた条が続きます。本条はその冒頭で、老人の欠点を五つ挙げています。気が急くこと、早く仕上げたがること、どっしり構えられないこと、胸に収めておけないこと、人の言葉を鵜呑みにすること。年を取れば落ち着くという通念とは逆に、残り時間を意識するほど人は急ぎ、判断が粗くなるという観察です。自分自身に向けた警めとして書かれている点に、一斎の率直さがあります。経験を重ねた立場の人ほど、結論を急いでいないか、耳に心地よい報告を確かめずに信じていないかを振り返る材料になるでしょう。
この章句が説くこと
老い自戒速成自重人を見る目
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