言志四録 / 言志耋録 第三百二十条 養生に托して放肆する毋れ
老人毋托養生以放肆。毋托養生以奢侈。毋托養生以貪冐。書以自警。
書き下し
老人は養生に托して以て放肆すること毋れ。養生に托して以て奢侈すること毋れ。養生に托して以て貪冒すること毋れ。書して以て自ら警む。
現代語訳
老人は、養生にかこつけて勝手気ままに振る舞ってはならない。養生にかこつけてぜいたくをしてはならない。養生にかこつけて欲深くむさぼってはならない。これを書いて自らへの戒めとする。
解説
養生を口実にした三つの過ちを戒め、「書して以て自ら警む」と結ぶ一条です。放肆は気ままに振る舞うこと、奢侈はぜいたく、貪冒は欲深くむさぼること。体のためと言えば、好きなことをし、よいものを食べ、多くを求めることがいくらでも正当化できてしまいます。一一五七条で養生が私に出れば害を招くと述べたことの具体例とも読めます。八十歳の一斎が、他人ではなく自分自身への戒めとしてこれを書き付けている点に、老いてなお修養を続ける姿勢が表れています。もっともらしい理由が、実は自分の欲を通す口実になっていないか、振り返らせる条です。
この章句が説くこと
養生自戒奢侈口実節度
関連する章句
-
説苑・說叢聖人の衣や體に便にして以て身を安んじ、其の食や腹に安んず。衣を適し食を節し、口目に聽かず。
-
説苑・雜言孔子曰く、「中人の情は、余り有れば則ち侈り、足らざれば則ち倹にし、禁無ければ則ち淫し、度無ければ則ち失し、欲を縦にすれば則ち敗る。飲食に量有り、衣服に節有り、宮室に度有り、畜聚に数有り、車器に限有るは、以て乱の源を防ぐなり。故に夫れ度量は明らかにせざる可からず、善言は聴かざる可からず」と。
-
葉隠・聞書第一大酒にて後れを取りたる人、数多(あまた)なり。別して残念の事なり。まず我が丈け分(たけぶん)をよく覚え、その上は飲まぬ様にありたきなり。そのうちにも、時により、酔い過す事あり。酒座(しゅざ)には就中(なかんずく)気をぬかさず、図(はか)らぬ事出来(しゅったい)ても間に合う様に、了簡(りょうけん)あるべき事なり。また酒宴は……
-
尚書・說命中寵を啓きて侮りを納るる無かれ、過ちを恥じて非を作す無かれ。
-
葉隠・聞書第一時により、人に用(よう)をいい、物をもらう事有り。それも度重(たびかさ)ならば、無心(むしん)になり、いやしかるべし。何とぞ済む事ならば、用をいわぬように有りたきなり。
-
論語・述而篇子は釣りして綱せず、弋して宿を射ず。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る