言志四録 / 言志耋録 第三百十九条 人事天の道、天助人の理
老人不忘養生固可。然至於已甚。則不免人欲。可勞則勞。可苦則苦。一息尙存。勿愆人道。乃是人事天之道。天助人之理。養生正路。葢在於此。
新字:老人不忘養生固可。然至於已甚。則不免人欲。可労則労。可苦則苦。一息尚存。勿愆人道。乃是人事天之道。天助人之理。養生正路。葢在於此。
書き下し
老人の養生を忘れざるは固より可なり。然れども已甚しきに至れば、則ち人欲を免れず。労すべくんば則ち労し、苦しむべくんば則ち苦しむ。一息尚ほ存すれば、人道を愆ること勿れ。乃ち是れ人の天に事ふるの道、天の人を助くるの理なり。養生の正路は、蓋し此に在り。
現代語訳
老人が養生を忘れないのはもちろんよい。しかし度を越すようになると、私欲を免れない。働くべきときは働き、苦しむべきときは苦しむ。息が一つでも残っているかぎり、人の道を誤ってはならない。これこそが人が天に仕える道であり、天が人を助ける道理である。養生の正しい道は、思うにここにある。
解説
養生論の総まとめとも言える一条です。養生を心がけるのはよいが、度を越せば私欲になる。働くべき時には働き、苦しむべき時には苦しむ。息のある限り人の道を外れないこと、それが天に仕える道であり、天が人を助ける理だと言います。「一息尚ほ存すれば」は朱子学の先達の言葉としても知られる表現で、死ぬまで努めを怠らない覚悟を示します。身を守るために務めを避けるのは本末転倒で、務めを果たすことこそが本当の養生だという逆転がここにあります。健康管理を理由に果たすべき役割から退いていないか、休むことと逃げることの違いを考えさせる条です。
この章句が説くこと
養生人道事天人欲努力
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