言志四録 / 言志耋録 第三百十六条 守身の孝
余今年辛亥耋齡。衰老之極。肚裏夙痾亦同衰。因思於今宜虞外感。乃日服藥預防。又益節飮食。愼起居。庶乎以延一日。即亦守身之孝爾歟。
新字:余今年辛亥耋齢。衰老之極。肚裏夙痾亦同衰。因思於今宜虞外感。乃日服薬預防。又益節飲食。慎起居。庶乎以延一日。即亦守身之孝爾歟。
書き下し
余、今年辛亥、耋齢なり。衰老の極、肚裏の夙痾も亦同じく衰ふ。因りて思ふ、今に於て宜しく外感を虞るべしと。乃ち日に薬を服して預め防ぎ、又益々飲食を節し、起居を慎む。庶はくは以て一日を延べん。即ち亦身を守るの孝なるか。
現代語訳
私は今年、辛亥の年(嘉永四年)で八十歳になる。衰え老いることの極みで、腹の中の持病もまた同じように衰えて弱まった。そこで思うに、今は外から受ける病(風邪など)を用心すべきである。そこで毎日薬を飲んで前もって防ぎ、またますます飲食を控えめにし、日常の立ち居振る舞いを慎んでいる。こうして一日でも命を延ばしたいと願う。これもまた我が身を守るという孝行であろうか。
解説
一斎が自らの年齢と体調を記した、日記のような一条です。辛亥は嘉永四年(一八五一)、一斎は数えで八十歳、書名の「耋」はこの年齢を指します。長年の持病は勢いが衰えたかわりに、今は外からの病に用心すべきだとして、薬を服し、飲食を節し、起居を慎んでいると書きます。そして、一日でも長く生きようとすることを「身を守るの孝」と位置づけます。『孝経』の、身体は父母から受けたものだから損なわないのが孝の始めという教えに基づくものです。長命への執着ではなく、預かったものを大切にするという構えで養生をとらえている点に、老いを迎えた儒者の自覚が見えます。
この章句が説くこと
養生孝守身老い自記
関連する章句
-
論語・為政篇子游孝を問う。子曰く、「今の孝者は、是れ能く養うと謂う。犬馬に至るまで、皆能く養うこと有り。敬せずんば、何を以て別たんや。」
-
論語・為政篇子夏孝を問う。子曰く、「色難し。事有れば弟子其の労に服し、酒食有れば先生に饌(まかな)う。曾て是を以て孝と為さんや。」
-
論語・学而篇子曰く、「父在せば其の志を観、父没すれば其の行いを観る。三年父の道を改むること無くんば、孝と謂う可し。」
-
論語・為政篇孟懿子孝を問う。子曰く、「違(たが)うこと無かれ。」樊遅御(ぎょ)す。子之に告げて曰く、「孟孫我に孝を問う。我対えて曰く、違(たが)うこと無かれと。」樊遅が曰く、「何の謂(いい)ぞや。」子曰く、「生きては之に事(つか)うるに礼を以てし、死しては之を葬るに礼を以てし、之を祭るに礼を以てす。」
-
論語・為政篇孟武伯孝を問う。子曰く、「父母は唯其の疾(やまい)を之憂う。」
-
論語・里仁篇子曰く、三年父の道を改むること無きは、孝と謂う可し。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る