言志四録 / 言志耋録 第三百十四条 物其の節度を得れば養と為す
觀花木以養目。聽啼鳥以養耳。嗅香草以養鼻。食甘滑以養口。時揮灑大小字以養臂腕。徜徉園中以養股脚。凡物得其節度。皆足以爲養耳。
新字:観花木以養目。聴啼鳥以養耳。嗅香草以養鼻。食甘滑以養口。時揮灑大小字以養臂腕。徜徉園中以養股脚。凡物得其節度。皆足以為養耳。
書き下し
花木を観て以て目を養ひ、啼鳥を聴きて以て耳を養ひ、香草を嗅ぎて以て鼻を養ひ、甘滑を食ひて以て口を養ひ、時に大小の字を揮灑して以て臂腕を養ひ、園中に徜徉して以て股脚を養ふ。凡そ物其の節度を得れば、皆以て養と為すに足るのみ。
現代語訳
花や木を眺めて目を養い、鳥のさえずりを聞いて耳を養い、香りのよい草をかいで鼻を養い、甘くなめらかなものを食べて口を養い、ときには大小の字を筆で書いて腕を養い、庭の中をぶらぶら歩いて脚を養う。およそ物事はほどよい節度を得れば、どれも養いとするに十分なのである。
解説
目・耳・鼻・口・腕・脚と、身体の各部を日々の小さな楽しみで養う様子を描いた、情景の浮かぶ一条です。花を見る、鳥を聞く、香を嗅ぐ、うまいものを食べる、書をしたためる、庭を歩く。いずれも特別な養生法ではなく、暮らしの中のありふれた営みです。一斎は書をよくしたことで知られ、揮毫が腕の養いになるという言い方には実感がこもっています。結びの「節度を得れば」が要で、楽しみもほどを越えなければ養いになり、越えれば害になるという、これまでの条と一貫した考えです。日常の小さな行為をどう整えるかが、長く力を保つ土台になることを思わせます。
この章句が説くこと
養生節度五感日常
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