言志四録 / 言志耋録 第三百六条 養老の方は坤道
養老之方。恰是坤道。心欲靜。事欲簡。衣欲厚。食欲柔。室欲西南之暖。
新字:養老之方。恰是坤道。心欲静。事欲簡。衣欲厚。食欲柔。室欲西南之暖。
書き下し
養老の方は、恰も是れ坤道なり。心は静かならんことを欲し、事は簡ならんことを欲し、衣は厚からんことを欲し、食は柔らかならんことを欲し、室は西南の暖かならんことを欲す。
現代語訳
老いを養う方法は、ちょうど坤の道(大地の柔順で静かな徳)そのものである。心は静かであることを求め、事は簡素であることを求め、衣服は厚いことを求め、食事は柔らかいことを求め、部屋は西南向きの暖かいところを求める。
解説
養老の方法を『易』の坤卦になぞらえた一条です。乾が天の剛健な動きを表すのに対し、坤は大地の柔順で静かに受け容れる徳を表します。易では坤の方角を西南とするため、部屋も西南の暖かいところがよいと結びつけているのが巧みです。心を静かに、事を簡素に、衣を厚く、食を柔らかく——若い時の積極的な乾の生き方から、老いては受け身の坤の生き方へ移るという見取り図です。人生の段階によって力の出し方を変えるという発想は、役割が変わっていく職業生活の後半を考えるうえでも一つの参考になるでしょう。
この章句が説くこと
養老坤道易静簡素
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