言志四録 / 言志耋録 第二百九十九条 老人の錯記誤認
老人於數年前事。往往有錯記誤認。今漫語人。不免少差。或做障碍。不容不愼。
新字:老人於数年前事。往往有錯記誤認。今漫語人。不免少差。或做障碍。不容不慎。
書き下し
老人は数年前の事に於て、往往錯記誤認有り。今漫りに人に語れば、少差を免れず。或は障碍を做す。慎まざるを容れず。
現代語訳
老人は数年前の出来事について、しばしば記憶違いや思い違いがある。それをいま、みだりに人に語れば、少しの食い違いは免れない。ときには差し障りを引き起こすこともある。慎まないわけにはいかない。
解説
老人は数年前のことでもしばしば記憶違いや思い違いをする、それを軽々しく人に語れば食い違いが生じ、ときには差し障りにもなる、と一斎は戒めます。前条に続き、老いによる弱点を自覚し、慎もうとする一条です。昔話は年長者の楽しみでもありますが、それが事実として受け取られれば、人の評判や判断を誤らせることもある。記憶は時とともに変わり、自分に都合よく整えられていくものです。一斎はその危うさを、年長の儒者として重く見ていたのでしょう。年齢に関わらず、過去の経緯を語るときには、記憶の確かさを疑い、必要なら記録にあたる姿勢が、組織の中での信頼につながるのではないでしょうか。
この章句が説くこと
老い記憶慎言自戒事実確認
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