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言志四録 / 言志耋録 第二百七十九条 愛憎の忽ち変ずる

美酒膏粱。誠不過口腹一時之適。既入腸內。則以速化爲糞溺爲快。唯懼留滯成病。何其愛憎之忽變然邪。人主於士女愛憎。亦類此。

新字:美酒膏粱。誠不過口腹一時之適。既入腸内。則以速化為糞溺為快。唯懼留滞成病。何其愛憎之忽変然邪。人主於士女愛憎。亦類此。

書き下し

美酒膏粱は、誠に口腹一時の適に過ぎず。既に腸内に入れば、則ち速かに化して糞溺と為るを以て快と為し、唯だ留滞して病を成すを懼る。何ぞ其の愛憎の忽ち変ずること然るや。人主の士女に於ける愛憎も、亦此に類す。

現代語訳

うまい酒やごちそうは、まことに口と腹を一時満足させるものにすぎない。いったん腸の中に入れば、速やかにこなれて糞尿となるのを心地よいとし、ただ腸にとどまって病となることを恐れる。なんとまあ、その愛憎がたちまち変わることであろうか。君主が臣下や女性に対して抱く愛憎も、またこれに似ている。

解説

美酒や美食は口にするまでは大いに好まれるのに、腹に入れば早く消化されて出ていくことが望まれ、とどまれば病のもとと恐れられる。好まれたものが一転して厭われる、その愛憎の移ろいやすさを一斎は食物にたとえます。そして君主が臣下や女性に向ける寵愛も同じだと続けます。寵を得ても、それは口先の一時の快にすぎず、たちまち疎まれうるということです。仕える側には寵愛に頼る危うさを、上に立つ側には自分の愛憎の移ろいやすさを省みよと促す、辛辣な比喩でしょう。上司に気に入られることを拠り所にしていないか、また自分が人を好悪で遇していないか、双方の立場から読める一条です。

この章句が説くこと

愛憎寵愛移ろい君臣比喩

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