史記 / 田敬仲完世家
淳于髡曰:「弓膠昔干,所以爲合也,然而不能傅合疎罅。」騶忌子曰:「謹受令,請謹自附於萬民。」淳于髡曰:「狐裘雖敝,不可補以黃狗之皮。」騶忌子曰:「謹受令,請謹擇君子,毋雜小人其閒。」淳于髡曰:「大車不較,不能載其常任;琴瑟不較,不能成其五音。」騶忌子曰:「謹受令,請謹修法律而督姦吏。」淳于髡説畢,趨出,至門,而面其仆曰:「是人者,吾語之微言五,其應我若響之應聲,是人必封不久矣。」居朞,封以下邳,號曰成侯。威王二十三年,與趙王會平陸。二十四年,與魏王會田於郊。
新字:淳于髡曰:「弓膠昔干,所以為合也,然而不能傅合疎罅。」騶忌子曰:「謹受令,請謹自附於万民。」淳于髡曰:「狐裘雖敝,不可補以黄狗之皮。」騶忌子曰:「謹受令,請謹択君子,毋雑小人其閒。」淳于髡曰:「大車不較,不能載其常任;琴瑟不較,不能成其五音。」騶忌子曰:「謹受令,請謹修法律而督姦吏。」淳于髡説畢,趨出,至門,而面其仆曰:「是人者,吾語之微言五,其応我若響之応声,是人必封不久矣。」居朞,封以下邳,号曰成侯。威王二十三年,与趙王会平陸。二十四年,与魏王会田於郊。
書き下し
淳于髡曰く、「弓膠昔干は、合を為す所以なり。然れども疎罅を傅合すること能はず」と。騶忌子曰く、「謹んで令を受く。請ふ謹んで自ら万民に附かん」と。淳于髡曰く、「狐裘は敝ると雖も、補ふに黄狗の皮を以てすべからず」と。騶忌子曰く、「謹んで令を受く。請ふ謹んで君子を択び、小人を其の閒に雑ふる毋からん」と。淳于髡曰く、「大車も較せずんば、其の常任を載すること能はず。琴瑟も較せずんば、其の五音を成すこと能はず」と。騶忌子曰く、「謹んで令を受く。請ふ謹んで法律を修めて姦吏を督さん」と。淳于髡説き畢はり、趨りて出で、門に至りて、其の仆に面して曰く、「是の人は、吾之に微言五を語る。其の我に応ずること響の声に応ずるが若し。是の人必ず封ぜらるること久しからざらん」と。朞に居りて、封ずるに下邳を以てし、号して成侯と曰ふ。威王二十三年、趙王と平陸に会す。二十四年、魏王と郊に会して田す。
現代語訳
淳于髡は言った。「弓を作るのに膠と古い木を使うのは、ぴったり合わせるためである。しかし、大きく開いた隙間を貼り合わせることはできない」。騶忌子は言った。「謹んでお言いつけを受ける。万民と心を通わせ、隙間ができないよう努めよう」。淳于髡は言った。「狐の皮衣は古びても、黄色い犬の皮で繕ってはならない」。騶忌子は言った。「謹んでお言いつけを受ける。君子を選んで用い、その間に小人を混ぜないようにしよう」。淳于髡は言った。「大きな車も調整しなければ、いつもの荷を載せられない。琴や瑟も調弦しなければ、五音を奏でることはできない」。騶忌子は言った。「謹んでお言いつけを受ける。法律を整えて、悪い役人を取り締まろう」。淳于髡は話し終えると、小走りに退出し、門まで来ると、従者に向かって言った。「あの人に、わたしは含みのある言葉を五つ語った。あの人の応じ方は、こだまが声に応じるようだった。あの人は近いうちに必ず領地を与えられるだろう」。一年たって、騶忌は下邳(かひ)に封ぜられ、成侯と号した。威王の二十三年、趙王と平陸で会見した。二十四年、魏王と郊外で会見して狩りをした。
解説
関連する章句
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史記 田敬仲完世家諸侯之を聞き、敢へて兵を斉に致すもの莫きこと二十余年。騶忌子琴を鼓するを以て威王に見ゆ。威王説びて之を右室に舎らしむ。須臾にして、王琴を鼓す。騶忌子戸を推して入りて曰く、「善いかな琴を鼓すること」と。王勃然として説ばず、琴を去りて剣を按じて曰く、「夫子容を見て未だ察せず。何を以てか其の善きを知る」と。騶忌子曰く、「夫れ大絃の濁りて以て春のごとく温かなるは、君なり。小絃の廉折にして以て清きは、相なり。之を攫むこと深く、之を醳つこと愉なるは、政令なり。鈞諧して以て鳴り、大小相益し、回邪して相害せざるは、四時なり。吾是を以て其の善きを知る」と。王曰く、「善く音を語る」と。騶忌子曰く、「何ぞ独り音を語るのみならん。夫れ国家を治めて人民を弭むること皆其の中に在り」と。王又勃然として説ばずして曰く、「夫の五音の紀を語るが若きは、信に未だ夫子の如き者有らざるなり。夫の国家を治めて人民を弭むるが若きは、又何為れぞ糸桐の閒に乎てせん」と。騶忌子曰く、「夫れ大絃の濁りて以て春のごとく温かなるは、君なり。小絃の廉折にして以て清きは、相なり。之を攫むこと深くして之を捨つること愉なるは、政令なり。鈞諧して以て鳴り、大小相益し、回邪して相害せざるは、四時なり。夫れ復して乱れざる者は、治昌なる所以なり。連なりて径なる者は、亡を存する所以なり。故に曰く琴音調ひて天下治まると。夫れ国家を治めて人民を弭むる者は、五音に若くは無し」と。王曰く、「善し」と。騶忌子見えて三月にして相印を受く。淳于髡之に見えて曰く、「善く説くかな。髡に愚志有り、願はくは諸を前に陳べん」と。騶忌子曰く、「謹んで教へを受けん」と。淳于髡曰く、「全きを得れば全く昌え、全きを失へば全く亡ぶ」と。騶忌子曰く、「謹んで令を受く。請ふ謹んで前を離るる毋からん」と。淳于髡曰く、「狶膏棘軸は、滑らかと為す所以なり。然れども方穿を運らすこと能はず」と。騶忌子曰く、「謹んで令を受く。請ふ謹んで左右に事へん」と。
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『新序』雜事第二淳于髡の徒禮倨り、鄒忌の禮卑し。淳于髡等曰く、狐白の裘、之を補うに弊羊皮を以てせば、何如、と。鄒忌曰く、敬んで諾す。請う、敢えて賢に雜うるに不肖を以てせざらん、と。淳于髡曰く、方内にして員釭なるは、如何、と。鄒忌曰く、敬んで諾す。請う、謹んで門内し、敢えて賓客を留めざらん、と。淳于髡等曰く、三人共に一羊を牧すれば、羊食らうを得ず、人も亦た息うを得ず。何如、と。鄒忌曰く、敬んで諾す。吏を減らし員を省き、民を擾す無からしめん、と。淳于髡等三たび稱し、鄒忌三たび之を知ること響きに應ずるが如し。淳于髡等辭屈して去る。鄒忌の禮倨り、淳于髡等の禮卑し。
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説苑・復恩楚魏晋陽に会し、将に以て斉を伐たんとす、斉王之を患ひ、人をして淳于髡を召さしめて曰く、「楚魏謀りて斉を伐たんと欲す、願はくは先生と寡人と共に之を憂へん」と。淳于髡大いに笑ひて応ぜず、王後に之に問ふも、又復た大いに笑ひて応ぜず、三たび問ふも応ぜず、王怫然として色を作して曰く、「先生寡人の国を以て戯と為すか」と。淳于髡対へて曰く、「臣敢へて王の国を以て戯と為さざるなり、臣鄰の田を祠るを笑ふ、奩飯を以て一鮒魚に与ふ、其の祝に曰く、下田洿邪なるも、穀百車を得ん、蟹堁の者は禾に宜しからん、と。臣其の祠る所以の者少くして求むる所の者多きを笑ふなり」と。王善しと曰ひ、之に千金、革車百乗を賜ひ、立てて上卿と為す。
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史記 孟子荀卿列伝淳于髡(こん)は斉人なり。博聞彊記にして、学ぶに主とする所無し。その諫説は、晏嬰の人と為りを慕ふなり、然れども意を承け色を観るを務めと為す。客に髡を梁の恵王に見えしむる有り。恵王左右を屏け、独り坐して再びこれに見ゆるも、終に言無きなり。恵王これを怪しみ、以て客を譲めて曰く、「子の淳于先生を称するや、管・晏も及ばずと。寡人に見ゆるに及びて、寡人未だ得る有らず。豈に寡人は為に言ふに足らざるか。何の故ぞや」と。客以て髡に謂ふ。髡曰く、「固よりなり。吾前に王に見えしとき、王の志は駆逐に在り。後にまた王に見えしとき、王の志は音声に在り。吾是を以て黙然たり」と。客具に以て王に報ず、王大いに駭きて、曰く、「嗟乎、淳于先生は誠に聖人なり。前に淳于先生の来たるや、人に善馬を献ずる者有り、寡人未だ視るに及ばずして、会々先生至る。後に先生の来たるや、人に謳ふ者を献ずる有り、未だ試みるに及ばずして、また会々先生来たる。寡人人を屏くと雖も、然れども私心は彼に在り、
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説苑・尊賢十三年、諸侯兵を挙げて以て斉を伐たんとす。斉王之を聞き、惕然として恐れ、其の群臣大夫を召して告げて曰く、「智有らば寡人の為に之を用いよ」と。是に於いて博士淳于髡天を仰ぎて大笑して応えず。王復た之を問うに、又大笑して応えず。三たび笑いて応えず。王艴然として色を作して悦ばず曰く、「先生寡人の語を以て戯れと為すか」と。対えて曰く、「臣敢えて大王の語を以て戯れと為すに非ざるなり。臣は臣の隣の田を祠るを笑うなり。一奩の飯、一壺の酒、三鮒魚を以て、祝いて曰く、『蟹堁なる者は禾に宜しく、洿邪なる者は百車、之を後世に伝えて、洋洋として余り有れ』と。臣は其の鬼に賜うこと薄くして之に請うこと厚きを笑うなり」と。是に於いて王乃ち淳于髡を立てて上卿と為し、之に千金、革車百乗を賜い、諸侯の事を平ぐるに与らしむ。諸侯之を聞き、立ちどころに其の兵を罷め、其の士卒を休め、遂に敢えて斉を攻めず。此れ淳于髡の力に非ざらんや。
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史記 滑稽列伝孔子曰く、「六芸は治に於いて一なり。礼は以て人を節し、楽は以て和を発し、書は以て事を道(い)ひ、詩は以て意を達し、易は以て神化し、春秋は以て義す」と。太史公曰く、天道恢恢として、豈に大ならずや。談言微中すれば、亦以て紛を解く可し。淳于髡は斉の贅婿なり。長七尺に満たず、滑稽にして多弁、数々諸侯に使ひして、未だ嘗て屈辱せられず。斉の威王の時、隠を喜び、好みて淫楽長夜の飲を為し、沈湎して治めず、政を卿大夫に委ぬ。百官荒乱し、諸侯並び侵し、国且に危亡せんとし、旦暮に在り。左右敢へて諫むる莫し。淳于髡之に説くに隠を以てして曰く、「国中に大鳥有り、王の庭に止まり、三年蜚ばず又鳴かず。此の鳥何なるかを知らず」と。王曰く、「此の鳥飛ばずんば則ち已む。一たび飛べば天に沖(のぼ)る。鳴かずんば則ち已む。一たび鳴けば人を驚かす」と。是に於いて乃ち諸県の令長七十二人を朝せしめ、一人を賞し、一人を誅し、兵を奮ひて出づ。諸侯振驚し、皆斉の侵地を還す。威行はるること三十六年。語は田完世家の中に在り。
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