言志四録 / 言志耋録 第二百七十六条 好悪を早く知らしむ
凡治大都者。宜以知其土俗人氣爲先。爲之民者。必覗新尹之好惡。欲使人不覗。則倍覗之。故當使人早知其好惡。郤好。何好惡之爲可。恤孤寡。愛忠良。禁奢侈。折强梗。是爲可。
新字:凡治大都者。宜以知其土俗人気為先。為之民者。必覗新尹之好悪。欲使人不覗。則倍覗之。故当使人早知其好悪。郤好。何好悪之為可。恤孤寡。愛忠良。禁奢侈。折強梗。是為可。
書き下し
凡そ大都を治むる者は、宜しく其の土俗人気を知るを以て先と為すべし。之が民たる者は、必ず新尹の好悪を覗ふ。人をして覗はざらしめんと欲すれば、則ち倍ゝ之を覗ふ。故に当に人をして早く其の好悪を知らしむべし。却って好し。何の好悪をか之れ可と為す。孤寡を恤み、忠良を愛し、奢侈を禁じ、強梗を折く、是れを可と為す。
現代語訳
およそ大きな都市を治める者は、その土地の風俗や人々の気質を知ることを第一とすべきである。その地の民は、必ず新しい長官の好き嫌いをうかがうものである。人にうかがわせまいとすれば、ますますうかがう。だから人々に早く自分の好き嫌いを知らせるのがよい。そのほうがかえってよい。では、どんな好き嫌いがよいのか。身寄りのない者や寡婦をいたわり、忠実で善良な者を愛し、贅沢を禁じ、強情で手に負えない者を挫く、これがよいのである。
解説
大きな都市に新たに赴任した長官は、まずその土地の風俗や気質を知れ、と一斎は言います。民は必ず新任者の好悪を探ろうとし、隠そうとすればいっそう詮索するものです。ならば早く明かしてしまったほうがよい。ただし示す好悪は、弱い者をいたわり、忠実な者を愛し、贅沢を禁じ、横暴な者を挫くこと。先の「上官は嗜好を示さず」の条と対になり、私的な趣味は隠し、公の価値観ははっきり示せという使い分けが見えてきます。新しい部署や会社に着任したリーダーは、周囲から値踏みされます。何を大事にし、何を許さないのかを早めに言葉にすることが、無用な詮索や忖度を減らす近道になるのでしょう。
この章句が説くこと
好悪着任土俗価値観の明示為政
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