言志四録 / 言志耋録 第二百五十九条 上官は嗜好を示さず
爲上官者於事物宜無嗜好。一示嗜好。人必以此夤緣。但嗜義好善。則人之夤緣亦不厭耳。
新字:為上官者於事物宜無嗜好。一示嗜好。人必以此夤縁。但嗜義好善。則人之夤縁亦不厭耳。
書き下し
上官たる者は、事物に於て宜しく嗜好無かるべし。一たび嗜好を示さば、人必ず此を以て夤縁す。但だ義を嗜み善を好まば、則ち人の夤縁も亦厭はざるのみ。
現代語訳
上に立つ役人は、物事について好みを持たないようにするのがよい。いったん好みを示せば、人は必ずそれを手づるにして取り入ろうとする。ただし、義をたしなみ善を好むのであれば、人がそれを手づるに近づいてきても、少しも嫌うには及ばない。
解説
上に立つ者が好みを見せれば、人はそれを「夤縁」、つまり取り入る手づるにすると一斎は戒めます。書画や骨董、酒や遊びの好みが知られれば、贈り物や迎合が集まり、判断が曇ります。ところが一斎は一転して、義や善を好むことだけは示してよいと言います。それを手づるに近づく者は、少なくとも義や善を装わねばならず、結果として善が勧められるからです。好悪の示し方そのものが、周囲の振る舞いを方向づけるという洞察です。リーダーの何気ない好みが部下の忖度を生むことはよくあります。自分が何を喜ぶ人だと思われているのかを、ときに振り返ってみる価値がありそうです。
この章句が説くこと
嗜好夤縁忖度上に立つ者好善
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