言志四録 / 言志耋録 第二百七十五条 親民の職は恒有る者
親民之職。尤宜擇有恒者。若有才而無德。必敗醇俗。後雖有善者。而不能反之。
新字:親民之職。尤宜択有恒者。若有才而無徳。必敗醇俗。後雖有善者。而不能反之。
書き下し
親民の職は、尤も宜しく恒有る者を択ぶべし。若し才有りて徳無くんば、必ず醇俗を敗る。後に善者有りと雖も、而も之を反す能はず。
現代語訳
民に直接接する職には、とりわけ変わらぬ心(恒心)を持つ者を選ぶべきである。もし才能があっても徳がなければ、必ず素朴で厚い風俗を損なう。後に善い者がその職についても、もとに戻すことはできない。
解説
民に直接向き合う職には、才よりも「恒」ある者を選べと一斎は言います。恒とは、状況や利害で揺らがない変わらぬ心のこと。孟子は「恒産無くして恒心有る者は惟だ士のみ能くす」と言いました。才があっても徳のない者が民の上に立てば、人々の素朴で厚い気風を壊してしまい、後任に善い人が来ても取り戻せない、と一斎は警告します。風土や気風は、壊れるのは一瞬でも、育て直すには長い時間がかかるということでしょう。顧客や現場に直接接するポジションの人選は、組織の文化そのものを左右します。能力の高さだけで選んでよいのか、立ち止まって考える材料になる一条です。
この章句が説くこと
恒心才と徳人選風俗親民
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