言志四録 / 言志後録 第十四条 居官の四字
居官好字面有四。公字。正字。淸字。敬字。能守此。可以無過矣。不好字面亦有四。私字。邪字。濁字。傲字。苟犯之。皆取禍之道也。
新字:居官好字面有四。公字。正字。清字。敬字。能守此。可以無過矣。不好字面亦有四。私字。邪字。濁字。傲字。苟犯之。皆取禍之道也。
書き下し
官に居るに好き字面四有り。公の字、正の字、清の字、敬の字。能く此を守らば、以て過ち無かるべし。好からざる字面も亦四有り。私の字、邪の字、濁の字、傲の字。苟も之を犯さば、皆禍を取るの道なり。
現代語訳
官職にある者にとって、よい文字が四つある。公の字、正の字、清の字、敬の字である。これを守ることができれば、過ちを犯すことはないだろう。よくない文字もまた四つある。私の字、邪の字、濁の字、傲の字である。もしこれを犯すならば、どれも災いを招く道である。
解説
役職にある者の心得を、四つずつの対になる文字で示した条です。公と私、正と邪、清と濁、敬と傲。公正であれ、清廉であれ、慎み深くあれ、という内容自体は目新しいものではありませんが、一字ずつ対にして覚えやすくしたところに、座右に置かせようとする一斎の工夫があります。守れば過ちがなく、犯せば禍を招くと、結果まで言い切っているのも特徴です。前の条の部下への接し方に続き、上に立つ者自身の身の処し方を示したものと読めます。判断に迷ったとき、それが公か私か、清か濁か、敬か傲かと自問するだけで、見えてくるものがあるはずです。自分の仕事ぶりを一字ずつ照らしてみるのもよいでしょう。
この章句が説くこと
為政公私清廉敬驕り
関連する章句
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『呻吟語』内篇・談道・敬は人を擇ばず、事を擇ばず、時を擇ばず或ひと敬の道を問ふ。曰く、「外面整齊嚴肅、内面齊莊中正なるは、是れ靜時涵養底の敬なり。書を讀めば則ち心讀む所に在り、事を治むれば則ち心治むる所に在るは、是れ主一無適底の敬なり。門を出づれば大賓を見るがごとく、民を使ふには大祭を承くるがごとくなるは、是れ隨事小心底の敬なり」と。或ひと曰く、「若し笑談歌詠、宴息造次の時ならば、恐らくは是くのごとくんば則ち矜持して泰然ならざらん」と。曰く、「敬は端嚴を以て體と為し、虛活を以て用と為し、正を離れざるを以て主と為す。齋日に衣冠して寢ぬるは、祭る所の者を夢寐すればなり。齋せざるの寢は、則ち衣を解き冕を脫ぐ。未だ衣冕を釋きて敬を持する者有らず。然り而して心邪僻に流れず、事道義に詭らざれば、則ち其の敬為るを害せず。君若し專ら端嚴の上に去きて敬を求めば、則ち鋤を荷ひ畚を負ひ、轡を執り車を御し、鄙事賤役、古の聖賢も皆之を為せり。豈に能く日日手容恭しく足容重からんや。又孔子の肱を曲げ掌を指し、及び居るに容らざる、點の沂に浴するがごときも、何ぞ其の敬為るを害せんや。大端心と正と依り、事と道と合へば、端嚴に拘拘たらずと雖も、其の敬為るを害せず。苟くも心千里に游び、意百欲を逐ひて、此の身は卻つて兀然として端嚴に此に在らば、這れは敬なりや否や。譬へば謹んで避け深く藏れ、燭を秉り珮を鳴らし、緩やかに步み輕く聲するは、女教の『内則』原と是くのごとし。貞信を養ふ所以なり。若し饁婦汲妻及び顛沛奔走の際に當たらば、自ら是れ迴避し得ず。然り而して貞信の守は深藏謹避する者と同じ。是れ何ぞ其の女教為るを害せんや。是の故に敬は人を擇ばず、敬は事を擇ばず、敬は時を擇ばず、敬は地を擇ばず。只だ個の心と正と依り、事と道と合ふを要するのみ」と。
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『呻吟語』内篇・修身・苟を反して敬と為す敬なる者は、苟せざるの謂ひなり。故に苟を反して敬と為す。
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