言志四録 / 言志耋録 第二百七十一条 刑罰は世ゝ軽く世ゝ重し
刑罰世輕世重。此是呂公經歷名言也。時代古今謂之世。須善開活眼以軒輊之。不必泥成法。
新字:刑罰世軽世重。此是呂公経歴名言也。時代古今謂之世。須善開活眼以軒輊之。不必泥成法。
書き下し
「刑罰は世ゝ軽く世ゝ重し」、此れは是れ呂公経歴の名言なり。時代の古今、之を世と謂ふ。須らく善く活眼を開きて、以て之を軒輊すべし。必ずしも成法に泥まず。
現代語訳
「刑罰は時代によって軽くし、時代によって重くする」、これは呂侯(周の穆王の司寇)が経験を重ねて得た名言である。時代の昔と今の違い、これを「世」という。よく生きた眼を開いて、刑罰の軽重を加減するべきである。必ずしも既定の法にこだわる必要はない。
解説
『書経』呂刑篇の「刑罰は世ゝ軽く世ゝ重し」を引き、刑罰の重さは時代に応じて加減すべきだと説く一条です。一斎はこれを、周の穆王に仕えた呂侯が多くの経験を経てたどり着いた名言と見ます。世が乱れれば重く、治まれば軽く。同じ罪でも時代の状況によってふさわしい処し方は変わるのだから、「活眼」を開いて見極めよ、定法に固執する必要はないというのです。先に見た「守る所有りて能く通ず」と同じく、原則と変通の兼ね合いを説いています。社内規程の懲戒や評価の基準も、作られた時代の前提を問い直さずに運用すると、実情とずれていくことがあるのではないでしょうか。
この章句が説くこと
刑罰時勢活眼変通成法
関連する章句
-
尚書・呂刑刑罰は世々に輕く世々に重し。
-
言志四録・言志録 第二百二十八条 十中七賞三罰賞罰は世と軽重す。然れども其の分数の大略は、十中七は賞、十中三は罰にして可なり。
-
言志四録・言志耋録 第二百五十八条 守りて通じ通じて守る凡そ宰臣たる者、徒らに成法に拘泥して、変通を知らざれば、則ち宰臣の用無し。時に古今有り、事に軽重有り。其の要は、守る所有りて能く通じ、通ずる所有りて能く守るに在り。是を之れ得たりと為す。
-
言志四録・言志後録 第百七十条 事を処するは平平穏穏凡そ事を処するには、須らく平平穏穏なるを要すべし。人の視聴を駭かすに至りては、則ち事善しと雖も或は小過に傷つく。
-
荀子・正論篇刑罪に称えば、則ち治まる。罪に称わざれば、則ち乱る。故に治まれば則ち刑重く、乱るれば則ち刑軽し。治を犯すの罪は固より重く、乱を犯すの罪は固より軽きなり。書に曰く、刑罰は世に軽く世に重し、と。此れの謂いなり。
-
尚書・呂刑惟れ斉しきも斉しからず、倫有り要有り。罰の懲らしむるは死に非ざるも、人は病に極まる。佞は獄を折むるに非ず、惟れ良は獄を折む。中に在らざる罔し。辞を差に察し、従はざるも惟れ従ふ。哀敬して獄を折め、明らかに刑書を啓きて胥占り、咸く中正に庶からしめよ。其の刑其の罰、其れ審らかに之を克くせよ。獄成りて孚あり、輸して孚あり。其の刑は上に備へ、両刑を并する有り。」王曰く、「嗚呼(ああ)!之を敬めや。官伯族姓よ、朕が言は懼るること多し。朕は刑を敬む、徳有るもの惟れ刑す。今天民を相け、配と作して下に在り、単辞を明清にせよ。民の乱るるは、獄の両辞を中聴せざるに罔し。或いは獄の両辞に私家すること無かれ。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る