言志四録 / 言志耋録 第二百四十条 武技を試みて英気を養ふ
今之儒者。徒爲書蠹。氣力不振。宜時試武技。以養英氣。於文學亦有益。余齡已耋。今則已矣。但使人肄習之耳
新字:今之儒者。徒為書蠹。気力不振。宜時試武技。以養英気。於文学亦有益。余齢已耋。今則已矣。但使人肄習之耳
書き下し
今の儒者は、徒らに書蠹と為りて、気力振るはず。宜しく時に武技を試みて、以て英気を養ふべし。文学に於ても亦益有り。余が齢已に耋す。今は則ち已んぬるかな。但だ人をして之を肄習せしむるのみ。
現代語訳
今の儒者は、ただ書物にかじりつく紙魚(しみ)となって、気力が振るわない。時には武芸を試みて、英気を養うべきである。それは学問にとっても益がある。私はもう八十の齢に達したから、今となってはどうしようもない。ただ人にそれを習わせるだけである。
解説
書物ばかりに向かう儒者の気力のなさを戒め、武芸で英気を養えと勧めた一条です。「書蠹」は本を食う紙魚のことで、読むばかりで生気のない学者を皮肉った言葉です。一斎は、体を動かし武芸を試みることは気力を養い、それが学問にも益すると言います。前条までの文武一致の議論を、日々の実践に落とし込んだものと言えます。そのうえで自分はもう八十の齢で手遅れだから、人に習わせるだけだと、老いを率直に認めて結んでいます。机に向かう仕事が多い人ほど、体を動かすことが頭の働きや気力を支えている。仕事の質を保つために、自分の気力をどう養っているかを考えさせます。
この章句が説くこと
文武気力健康学問老い
関連する章句
-
歎異抄・第十二条経釈を読み学せざる輩、往生不定の由のこと。この条、すこぶる不足言の義と言いつべし。 他力真実の旨を明かせる諸の聖教は、本願を信じ念仏を申さば仏に成る、そのほか何の学問かは往生の要なるべきや。 まことにこの理に迷えらん人は、いかにもいかにも学問して、本願の旨を知るべきなり。 経釈を読み学すといえども、聖教の本意を心得ざる条、もっとも不便のことなり。
-
人物志・體別夫れ學は材を成す所以なり、疏は情を推す所以なり。偏材の性は、移轉すべからず。
-
言志四録・南洲手抄学之を古訓に稽へ、問之を師友に質すは、人皆之を知る。学必ず之を躬に学び、問必ず諸を心に問ふは、其れ幾人有らんか。
-
言志四録・南洲手抄朝にして食はずば、昼にして饑う。少うして学ばずば、壮にして惑ふ。饑うるは猶忍ぶ可し、惑ふは奈何ともす可からず。
-
論語・為政篇子曰く、異端を攻むるは、斯れ害のみ。
-
説苑・建本子思曰わく、学は才を益す所以なり、礪は刃を致す所以なり。吾嘗て幽処して深く思うも、学の速やかなるに若かず。吾嘗て跂ちて望むも、高きに登りて博く見るに若かず。故に風に順いて呼べば、声疾しきを加えざれども聞く者衆し。丘に登りて招けば、臂長きを加えざれども見る者遠し。故に魚は水に乗り、鳥は風に乗り、草木は時に乗る。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る