言志四録 / 言志耋録 第二百三十九条 真勇は怯なるが如し
眞勇如怯。眞智如愚。眞才如鈍。眞巧如拙。
新字:真勇如怯。真智如愚。真才如鈍。真巧如拙。
書き下し
真勇は怯なるが如く、真智は愚なるが如く、真才は鈍なるが如く、真巧は拙なるが如し。
現代語訳
本当の勇気は臆病のように見え、本当の知恵は愚かなように見え、本当の才能は鈍いように見え、本当の巧みさは拙いように見える。
解説
本物はしばしば、その反対のように見えると説いた四句です。老子の「大巧は拙なるが若し」「大智は愚の如し」を思わせる表現で、一斎は儒者でありながら老荘の言葉も柔軟に取り込んでいます。本当に勇気のある人は、無用な争いを避けるので臆病に見える。本当に知恵のある人は、ひけらかさないので愚かに見える。才も巧みさも、底が深いほど表に出にくい。前条の文武論に続いて置かれており、武の真髄をわきまえた者の姿としても読めます。目立つ勇ましさや弁舌の巧みさに目を奪われて、控えめな人の力を見落としていないか、人を見る目を問い直させる一条です。
この章句が説くこと
勇気智謙虚人を見る目韜晦
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『春秋左氏伝』文公二年 狼瞫、死所を得る瞫曰く、「《周志》に之れ有り、『勇にして則ち上を害するは、明堂に登らず』と。死して義ならざるは、勇に非ざるなり。共に用ゐらるる之を勇と謂ふ。吾勇を以って右を求む。勇無くして黜けらるるは、亦た其の所なり。上我を知らずと謂ふも、黜けられて宜ならば、乃ち我を知るなり。子姑く之を待て」と。彭衙に及びて既に陳し、其の屬を以って秦の師に馳せ、焉に死す。晉の師之に從ひ、大いに秦の師を敗る。君子謂ふ、狼瞫是に於いてか君子なり、と。《詩》に曰く、「君子如し怒らば、亂庶(こひねが)はくは遄(すみ)やかに沮(や)まん」と。又曰く、「王赫として斯れ怒り、爰に其の旅を整ふ」と。怒りて亂を作さず、而して以って師に從ふ、君子と謂ふ可し。秦伯猶ほ孟明を用ふ。孟明增して國政を脩め、重ねて民に施す。趙成子諸大夫に言ひて曰く、「秦の師又至らば、將に必ず之を辟けんとす。懼れて德を增す、當たる可からざるなり。《詩》に曰く、『爾が祖を念ふ毋からんや、聿(ここ)に厥の德を脩む』と。孟明之を念へり。德を念ひて怠らず、其れ敵す可けんや」と。
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孫子・九地篇吾が士に余財無きは、貨を悪むに非ざるなり。余命無きは、寿を悪むに非ざるなり。令の発するの日、士卒の坐する者は涕襟を沾し、偃臥する者は涙頤に交わる。之を往く所無きに投ずれば、則ち諸・劌の勇なり。
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説苑・立節士君子の勇有りて行に果なる者、以て節を立て誼を行わずして、妄死非名を以てするは、豈に痛ましからずや。士殺身以て仁を成し、害に触れて以て義を立て、節理に倚りて死地を議せざる有り。故に能く身死して名来世に流る、勇断有るに非ずんば、孰か能く之を行わんや。
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