言志四録 / 言志耋録 第二百三十五条 騎戦も講ぜざるべからず
吾邦。於古代有騎戰。及後甲越竝精於兵。於是軍伍各有成法。臨戰卸騎步戰。但亂軍追敵。用騎耳。然應變戰鬪。無一定。則騎戰亦不容不講。
新字:吾邦。於古代有騎戦。及後甲越並精於兵。於是軍伍各有成法。臨戦卸騎歩戦。但乱軍追敵。用騎耳。然応変戦闘。無一定。則騎戦亦不容不講。
書き下し
吾が邦、古代に於て騎戦有り。後に及びて甲越並びに兵に精し。是に於て軍伍各成法有り。戦に臨みては騎を卸りて歩戦し、但だ乱軍に敵を追ふに、騎を用ふるのみ。然れども変に応ずる戦闘は、一定無ければ、則ち騎戦も亦講ぜざるを容れず。
現代語訳
わが国では、古代には騎馬戦があった。後の時代になって甲斐(武田)と越後(上杉)がともに兵法に精通した。これにより軍の編成にはそれぞれ定まった方式ができ、戦いに臨んでは馬を下りて徒歩で戦い、ただ乱戦で敵を追うときにだけ騎馬を用いるようになった。しかし変化に応じて戦う戦闘には一定の型がないのだから、騎馬戦もまた研究しないわけにはいかない。
解説
日本の騎馬戦の歴史を振り返り、その研究を怠るなと説いた一条です。一斎によれば、古代には騎馬で戦ったが、武田・上杉が兵法を磨いて以来、軍の型が定まり、戦場では下馬して歩いて戦い、騎馬は敗走する敵を追うときだけに使うようになった。しかし戦いは状況に応じて変わるもので、決まった型はない。だから騎馬戦も研究しておかねばならないと言います。耋録のこのあたりには武芸や兵法を扱う条が続き、泰平の世が長く続いた幕末の武士に、実戦への備えを思い起こさせる意図も感じられます。今の定石だけに頼らず、使われなくなった手段も含めて選択肢を持っておくことの意味を考えさせます。
この章句が説くこと
兵法備え臨機応変武芸定石
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