言志四録 / 言志耋録 第二百二十五条 稗官野史を遠ざく
稗官野史。俚說劇本。吾人宜如淫聲美色遠之。余年少時好讀此等書。到今追悔不少。
新字:稗官野史。俚説劇本。吾人宜如淫声美色遠之。余年少時好読此等書。到今追悔不少。
書き下し
稗官野史、俚説劇本は、吾人宜しく淫声美色の如く之を遠ざくべし。余年少の時、好んで此等の書を読み、今に到りて追悔少なからず。
現代語訳
民間の小説や非公式の歴史、俗説や芝居の台本などは、我々は淫らな音楽や女色と同じように遠ざけるべきである。私は若いころこうした書物を好んで読み、今になって後悔することが少なくない。
解説
小説や俗書、芝居の台本は、淫らな音楽や女色と同じく遠ざけよと戒めた一条です。「稗官」は民間の話を集めた下級官吏のことで、そこから小説の意味になりました。江戸後期は読本や戯作が大いに流行した時代で、一斎自身も若いころ好んで読んだと告白し、八十を過ぎた今もそれを悔やんでいると記しています。自分の失敗を率直に語る姿に、説教よりも実感の重みがあります。面白さに引かれて時間を費やすうちに、本来読むべきものを読む時間が失われた、という悔いでしょう。何を読まないかを決めることも読書の一部です。限られた時間を何に使っているか、情報の取捨を見直すきっかけになります。
この章句が説くこと
読書時間節制後悔自戒
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