酔古堂剣掃 / 集豪・金を見て人を見ず
攫金於市者,見金而不見人;剖身藏珠者,愛珠而忘自愛。與夫決性命以饕富貴,縱嗜欲以損生者何異?
新字:攫金於市者,見金而不見人;剖身蔵珠者,愛珠而忘自愛。与夫決性命以饕富貴,縦嗜欲以損生者何異?
書き下し
金を市に攫む者は、金を見て人を見ず。身を剖きて珠を藏する者は、珠を愛して自ら愛するを忘る。夫の性命を決して以て富貴を饕り、嗜欲を縱にして以て生を損ふ者と何ぞ異ならん。
現代語訳
市場で金をひったくる者は、金だけが見えて人が目に入りません。自分の体を切り裂いて真珠を隠す者は、真珠を愛するあまり自分を大切にすることを忘れています。命を投げ出して富や地位をむさぼり、欲望をほしいままにして身を損なう者と、どこが違うでしょうか。
解説
欲に目がくらむ愚かさを、二つの極端な話で示した一則です。前者は『列子』に見える話で、白昼に市場で金を奪った男が、なぜ人前でと問われて、金だけが見えて人は見えなかったと答えました。後者は、西域の商人が美しい珠を手に入れ、身を裂いてその中に隠したという話で、唐の太宗が臣下を戒める喩えに用いたと伝えられます。著者は、富貴のために命を削る人も同じだと言います。目の前の利益に夢中になると、周りも自分自身も見えなくなります。何のために働いているのかを、ときどき問い直したいものです。
この章句が説くこと
節制欲望貪欲修身戒め
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