酔古堂剣掃 / 集綺・花は半開を看る
木香盛開,把杯獨坐其下,遙令青奴吹笛,止留一小奚侍酒,才少斟酌便退,立迎春架後。花看半開,酒飲微醉。
新字:木香盛開,把杯独坐其下,遥令青奴吹笛,止留一小奚侍酒,才少斟酌便退,立迎春架後。花看半開,酒飲微酔。
書き下し
木香盛んに開けば、杯を把りて獨り其の下に坐し、遙かに青奴をして笛を吹かしめ、止だ一小奚を留めて酒に侍せしむ。才かに少しく斟酌すれば便ち退きて、迎春の架の後に立つ。 花は半開を看、酒は微醉に飲む。
現代語訳
木香(もっこうばら)が盛りに咲くと、杯を手にして独りその下に座り、遠くで下男に笛を吹かせ、小さな童僕を一人だけ残して酒の世話をさせます。わずかに酒を注ぐとすぐに下がり、迎春花の棚の後ろに立っています。花は半ば開いたところを見て、酒はほろ酔いに飲むのがよいのです。
解説
独りで花の下に酒を楽しむ、ほどよい風流の心得を描いた一則です。木香は春に白や黄の小さな花を房のように咲かせるつる性のばらです。その下に独り座り、笛は遠くで吹かせ、酌をする童は注ぎ終えるとすぐに花棚の陰に退かせます。音も人も近すぎず、静けさを保ったまま楽しむ趣向です。結びの「花は半開を看、酒は微醉に飲む」は、菜根譚にもほぼ同じ句があります。満開の花や泥酔の酒は、盛りを越えてあとは崩れるばかりですが、半開と微酔には、これから満ちていく余白が残っています。仕事でも人付き合いでも、やりすぎず、少し手前で止めておくことが、長く味わう秘訣なのかもしれません。
この章句が説くこと
節制中庸閑適風雅菜根譚
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